Lilith Abi「shelter」


Lilith Abi「shelter」 (2016)

Crossover popsバンドこと、Lilith Abi (リリス・アバイ)の5thアルバム。
いつも通り、こじまりょうすけ(Keyとか色々)と薫(Vo)を中心に、曲毎にゲストを迎えて制作されたようです。こじま執念の録音&ミックス&マスタリングにより、各楽器の響きが素直に収まっており、聴いていて実に心地良い作品に仕上がっています。

ロック、ポップス、プログレ、ジャズ/フュージョン、サイケ、クラシック音楽…etc…、様々なジャンルを“クロスオーヴァー”し、アルバム毎に微妙な配分の違いで聴かせるこのバンドですが、本作は2ndアルバム「GREAT MOTHER」(2012)と同様、ロック色が強めでしょうか。まぁ、「強いて言えば」程度の話ですし、普段J-POPやふつーの(普通って何だ!?)ロックを聴いている人からすれば、これでもジャズ/フュージョン色は強いんだと思いますけど。

いつもなら「プロローグ」「インタールード」「エピローグ」を配置してアルバムを構成するのですが、今回はちと違います。最後は⑧epilogueで締めるし、冒頭と真ん中にはインスト曲がある。ただその2曲、①auspice⑤the pedestrian of oceanが所謂「繋ぎの曲」ではなく、ガッツリと聴かせるタイプのインストだっていう点が、いつもと異なります。本作がフルアルバムというよりはミニアルバムに近い曲数だというのもあるかもしれません。
いずれにせよ、「吉兆・前兆」と名付けられたは、シンフォニックかつロマンティックなメロディ使いにワクワクする曲ですし、DREAM THEATERを想起させるパートもある聴き応えのあるインストということで、今までの「プロローグ」「インタールード」「エピローグ」とは役割も作風も異なります。ドラマティックさも増し増しですしね。なんて部分的には、近作のドリムシよりスリリングなドリムシですよ。メタルとまではいかないけど、メタリックではある。
「ロック色が強い」という感想は、この2曲のインストのおかげっていうのもあるでしょうね。


再録曲が2つあります。
いずれも本作と作風の近い2nd「GREAT MOTHER」の収録曲で、それが②光りの雨⑦イエソド。逆説的にこの2曲があるから2ndの作風に寄せてきたとも言えるかもしれません。
双方に共通した感想(?)は、「そんな歌詞だったんだ!?知らなかったYO!」ってこと。いや、「GREAT MOTHER」には歌詞カードが入ってなかったからねぇ。それに薫は、言葉とメロディが一体化しているような独特の節回しで歌うから、歌詞が聞き取れないことも多いですし。

ライブでの定番曲と言ってもよいは、ヴァースの自由自在なフェイクっぷり、…というか薫の持つ「クセ」「個性」がより強く出ています。いや、「出ている」というより、意図的に出しているんだろうな。反面、サビでは伸びやかな歌唱が際立っているので、その対比はなかなか鮮やか。また、歌への没入度合いはさらに深くなり、特に、抑えがたい感情が漏れ出すようなラスサビのそれは印象的(その部分の歌詞が「こんなにも破裂しそうさ」なんだよな)。よりクリアな音響になったことで、各楽器の貢献がはっきり分かり、スリリングさも増したと感じます。
哀メロポップチューンのは、ドライブ感が増してますね。特にブリッジパートが力強くなっているかな。Baがすっげぇ効いてる。弾いてるのは、こじまじゃなくてゲストの松本勇人ですけど。同時に、生命線であるキラキラ感も堅持。やっぱ名曲だなー。この曲における薫のVo、というか声はね、もうね、サイコーなの。蕩ける。
2曲共、リリスのレパートリーの中でも特に強力なものだと思いますので、原曲の良さがスポイルされてなければそれだけでキラーっす。

本作、ロック色が強いといっても、ガサツさや大雑把な感触と無縁なのは、いつものリリスと同じです。むしろ繊細で、そのサウンドの豊潤さには驚くばかり。④I always await you⑥ロンドとウィンドといった、優しさや軽やかさが前面に出た曲もありますし。

新曲の中では③Unconditionallyが白眉ですね。
ひとくちで言えばプログレッシヴロックなんでしょうけど、それだけじゃこの曲に含まれている様々な要素をまるで説明できないことになってしまい、己の語彙不足にアアァッ!!と悶えるのみです。
あー、薫のなんという表現力! 冒頭の歌唱というか呟きはもはやホラーの域ですよ。呪詛だわこれ。コワイ!
それに、ヘンテコな拍子に、何だこのBaは? MAGMAか!?
最初はバラバラ気味に感じた演奏が徐々に収斂、歌はリフレインしながらも螺旋上昇し、曲冒頭とは全く別の世界へと突入。曲調はスピードアップし、シンセのキラキラ感の中、輝くようなラストの広がりが実に素晴らしい。
異形の名曲だろコレ。


安心印の再録曲あり、新機軸と言えそうなあり、楽器隊の雄弁さが光るインストあり。
歌と演奏のバランスの良い充実盤です。

【お気に入り】
⑦イエソド
②光りの雨
③Unconditionally
⑤the pedestrian of ocean
①auspice

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