ASRA「Sifartin Akashic」

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ASRA「Sifartin Akashic」 (2016)

仙台出身のエスニックHRバンド、ASRAの3rdフルアルバム。
「エスニック」とはいいつつも、民族音楽的要素がそれほど前面に出てきているわけではなく、所謂フォークメタルとは感触はだいぶ異なります。基本は女性VoをフィーチャーしたメロディックなHRですね。
因みに、ダンサーを擁するバンドであるHARAKIRI的なASURAとは異なります。阿修羅違い。

ライブは何回か観ていますし、2ndアルバムについては以前ちょこっと書きました(→コチラ)。私の中では、良いバンドではあるけど何かもうちょっと突き抜けたものが欲しいなぁという、ちょっともどかしさを感じる存在でありました。女性VoメロディックHRとして捉えると「エスニック」という要素に引っ張られ過ぎてキャッチーさに乏しいし、民族音楽色強めのメタルとして捉えると夢華嬢(Vo)の声にあるJ-POPに通じる大衆性がマニアックな方向に振り切らせない、というか。

で、本作。
「化けた」というほどではないですが、かなり良くなったんではないでしょうかね。今までの作品の中では一番強烈に魅かれます。理由については後述。


このアルバム、完全な新作というわけではなく、新曲と共に初期楽曲の再録Versionを収録した作品になっています。その初期曲のオリジナル音源はもしかしたら既に入手困難だったりするのかもしれませんが、少なくとも私は持ってませんので、全曲新鮮、純粋な新作として楽しむことができました(ライブで聴いたことのある曲はありましたけど)。
どの曲が「旧曲」なのかは、中心人物であるKIM(Gt)のブログに楽曲解説と合わせて説明がありますので、参考までに(→コチラ)。

アルバムはイントロSEを含む新曲3連発で幕を開けますが、聴き始めてすぐに感じたのは「お、陰陽座っぽいな」、ということ。曲によってヘヴィロック調だったり、ハードポップだったりという感触の違いはあれど、メロディ使いにしろリフにしろ楽曲展開にしろ、あちこちで妖怪重金属的な感じを受けました。以前から通じるところはあったんでしょうけど、なんだろな、アレンジが整理されて聴き処の押し出し方が上手くなったんでしょうか、ともあれウチのブログ的には歓迎すべきことです。

男女ツインVo体制のバンドではないですが、ほかに陰陽座を想起させるところといえば、ヴォーカル、および各楽器のバランスですかね。Vo、Gt、Ba、Dr、それぞれがちゃんと住み分けている音像であり、バンド一丸となった塊感や有無を言わせぬ迫力には乏しいものの、個々のパーツやバンドがやりたいこと/伝えたいことに聴き手の意識がちゃんと届くような、そんな心地良い音に仕上がっていますね。
個人的には、ラスト曲⑫Ray-line-ragaのようなツインリードGtがもう少しあると良いかな。ツインのハモりはあまりやり過ぎると飽きちゃうし、そういうバンドも多いので難しいところですけど、このバンドの場合は2本のGtの活用の仕方がもっと色々あると思う。
また、低音部の存在感やリズム隊の活躍っぷりがしっかり映える音楽になっており(Drはサポート)、特に、耳がTatsunori(Ba)の音を追いかける場面は多いです。


さて、本作高評価の理由ですけど、これは新曲の出来や方向性に依るところが大きいですね。(新曲に)キャッチーなメロディやHR/HMの流儀にストレートに則ったものが多くあり、それらが濃密かつ暗めな従来路線の曲と混じりあって、個性は失わずに、アルバム一枚としてバランス良くまとめられています。
「エスニック」であることに囚われなくなったんでしょうか、はたまた「ASRAらしさ」の幅を広げることに成功したんでしょうか、琢磨(Gt)が作曲した⑥GLITTERや、夢華嬢が作詞作曲したなんてまるでアニソンのように開放的ですが、同時にこのバンドの曲として違和感はありません。後者にはこのバンドらしい重心低めの演奏がしっかりと下敷きとしてありますし。

新曲の存在ゆえか、本作では民族風味が少し減退、味付け程度に収まってきたように感じます。もしくは、それらがごくごく自然に取り入れられていることと、メロディの煽情力が増したおかげで相対的にそこだけ目立つわけじゃなくなったのかしら?
(まぁ、陰陽座もそのイメージほど「和」を感じさせる要素が強いわけじゃないですからね。中心になっているのはオーセンティックなHR/HMだし。和風なのは、歌詞と黒猫(Vo)のちょっとした節回し、あとは…、衣装?/笑)

夢華嬢のVoの特徴として、聴き易さやヘンなクセの無さ、どの音域でも概ねスムーズで自然体に感じる歌唱、というのが挙げられると思いますが、もう一点、「重ねない」っていうのは、彼女の、というか、ASRAの特徴でしょうね。コーラスは最低限にしてシンプルに声の響きを活かす。楽器隊の住み分けにも言えることですが、Voパートに無駄な装飾が無いせいでメロディの良さが素直に伝わってきます。その逆に、フックに乏しい曲だと、なかなか苦しいものがあるんですけど……。。
今回、楽曲のキャッチーさが増したことで、夢華嬢の良さが今まで以上に引き出されているのを感じます。ASRAの音楽の中にこの声が投入されると、線の細さ(と敢えて言います)がそのまま繊細さ(=細やかな表現力)に繋がり、武器となっているところが面白い。
まぁ、まだまだ物足りなさを感じるところはありますけどね。安定感や声量、バラードでの歌唱やファルセットの捌き方等。


期待以上に良曲揃いの作品でした。気持ち良く聴くことができるので、長く楽しめそう。

【お気に入り】
⑨サーガ
⑫Ray-line-raga MVは → コチラ。
⑥GLITTER
③Soar Skanda
⑤神腕のラジャス
⑩Ignis fatuus


新曲が多いね。


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