スティーヴン・キング『悪霊の島』

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スティーヴン・キング『悪霊の島』 (白石朗 訳、文春文庫、上・下)

スティーヴン・キングの『悪霊の島』を読みました。

その島には何かがいる ― 事故で片腕を失い、孤島に移住したエドガーは、突如、絵を描く衝動に襲われた。意思と関わりなく彼の手が描いたのは、少女と船の絵。これは何を意味するのか。夜ごと聴こえる謎の音は何か。そして島に建つ屋敷が封じる秘密とは。巨匠が久々に放つ圧巻のモダンホラー大作。恐怖の帝王、堂々の帰還!

エドガーの描いた絵は話題を呼び、個展は大盛況となる。だが平穏な日々はそこまでだ。じっと機会をうかがってきた怪異が悪意が絶望が、ついにあふれだして愛する者を襲う。沈みゆく船、溺れ死んだ双子、屋敷に潜む忌まわしいもの。これぞモダンホラー!月光の照らす涙の最終章まで、黒い恐怖の奔流は止まらない。


がっつりスティーヴン。
どっぷりキング。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

上下巻、やたら長いです。
キング御大の作品にはもっと長いのがゴロゴロしてるはずなのに、コレはとてつもなく長く感じたなぁ。
ただ、それは物語の展開がごくゆっくりとしてるってだけで、ヘンテコな話を独自の説得力を以ってグイグイ紡いでゆくというキング節は健在。実に“らしい”濃密な描写を楽しむことが出来ます。

前半は素晴らしい家族小説。特に、主人公エドガーと娘とのやりとりの機微が読み手にビシバシ伝わってくるし、エドガーと隣人であるワイアマン&エリザベスの交流も読ませる。この丁寧な描写により、「一度は遠くに離れたもの(関係)がまた手の届きそうなくらい近づき、それがまた引き離される」という悲劇が、より一層際立っているような気がします。

過去の名作を彷彿とさせるシーンがあちこちにありますね。後半は特に。
邪悪なものに対して、過去と現在、2度の対峙があるところは『IT』を思わせるし、そもそもパーティーを組んで「悪」と対決するという構図は、『ダーク・タワー』シリ-ズや『ザ・スタンド』に通じる(『IT』もそう)。エリザベスの孤独な戦いと、それを助けた勇敢な乳母メルダの活躍は、エドガー&ワイアマン&ジャックのパーティーへと連なり、あたかもエリザベスからエドガーがバトンを受け取ったかのようなワクワクするような構成になっています。

ラストのカタルシスは、全てを容赦なく破壊しつくしていたような過去作に及ぶものではありませんが、登場人物の心情を通して、深く人間そのもののありように迫らんかとする筆致は、近作の方が冴えていると思いますね。読んでいると、キャラが真に迫ってきて、それぞれの存在や一つ一つのエピソードが実に愛おしくなってくる。

御大らしさに溢れた力作。

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