ANATHEMA「a sort of homecoming」


ANATHEMA「a sort of homecoming」 (2015)

イギリスのプログレッシヴ・ロック・バンドによるライブ作品。私が買ったのは、2枚組CD+DVDの国内盤です。
ANATHEMAって昔は「アナシマ」って表記だったのに、今は「アナセマ」なんですね。アクエネ/アチエネみたいなもんか。
…って書いているうちに、若いファンの中にはARCH ENEMYのことが日本では「アーク・エネミー」って言われてたこと自体知らない人もいるんだろうなぁ…と思い至って、うすら寒くなっているという、、、。

私は特別熱心なこのバンドのファンではありませんが、本作がバンド結成の地・リヴァプールでのショウを収めた凱旋公演であること、そして舞台として選ばれたのがリヴァプール大聖堂ということで、発売を知った日に即ポチしちゃいましたね。教会見たかったの、教会♡ しっかし、「リヴァプール大聖堂」で画像検索掛けると、カッチョ良過ぎて震えるわー。

CDとDVDの収録内容は同じですので、以下、DVD映像についての感想になります。


アコースティック・ライブということですが、編成はDrもいるフル・バンドです。それに、曲によってチェロとヴァイオリンのゲストが加わる形。
このANATHEMA、血縁者が多い家族のような(編成の)バンドですが、ことこのライブにおけるパフォーマンスの中心になっているのは、VincentとDanielのCavanagh兄弟になります。リズム隊無しで、2人だけでプレイする場面が何回もありますし。それに女性Vo、Lee Douglasが加わってツインVoになったり(時にトリプルVo)。Leeは、ドラマーであるJohnの妹さんですね。

「アコースティック」なんですけど、こじんまりとしたサウンドではありません。かつ、素朴さを感じさせる面もありますが、洗練された美しさの方が勝る印象。それはフル・バンドという編成のおかげもありますが、(特に)Danielによるサウンド構築のやり方に依っているところが大きいです。
GtにKeyにVoにと大活躍しているDaniel、ルーパーと言うんでしょうか、足元のエフェクターにその場で弾いたフレーズを録音させて、それを流しっぱにする手法を取るんですね。例えば、ギターのボディを叩いてリズム・パターンを作ってそれをその場で録音→ループさせて、さらにアコギのカッティングを重ねてループさせて、そこに新たなKeyやGtがフレーズを重ねてそれもループさせて…みたいに、と徐々に分厚く音の層を積み上げてゆきます。
そんな風に、彼が、そしてバンドが、その場で音を手造りしてゆく様子が実に緊張感に満ちており、同時に温かみがあります。各曲それぞれ、初めは静かに注意深く、そして段々と情熱的に盛り上がってゆく様にゾクゾクしてきます。

曲に奉仕するような楽器陣の過不足無い演奏も確かなものですし、ヴァイオリンとチェロの美しい響きは曲に素晴らしい彩を添えています(音も綺麗に録れてる)。ただそれよりも、ヴォーカル2人の歌唱がすげぇのなんの。特にVincentの豊かな声量と繊細な表現力、情熱を感じさせる歌い回しは、ヤバいよコレ。ビビった。
キャリアの初期はバンドの音楽性が異なっていた(ドゥーム/ゴシック)ため、Vo担当ではありませんでしたが、こんなに物凄い歌い手だったとは…。CD音源だとかなり作り込まれているから、ミュージシャン本人の実力がどの程度のものか分からないところもありましたし。


そして、大聖堂という環境と、演出。
多くのHR/HMバンドがこういう特別な舞台でライブを行う場合、実際より大きく煌びやかに見せようとするもんだと思うんですけど、このバンドの場合はそんなことはありませんでした。著名な宗教施設であることや、地元への敬意の念もあるんでしょう、そこにあったのは、厳かな場の雰囲気と自然体なバンドの姿です。
照明効果は抑制の効いたもので、ステージ上のメンバーを眩く照らすというよりは、青だったり紫だったり赤だったり緑だったり…と色合いは変化しつつも、落ち着いた演出で以って聖堂の構造物の輪郭を縁取るような感じ。“動”というより“静”のライティングと言えるでしょうか。
バンド側は自分達のできることを精一杯に、でも同時に、ステージに立っていることをリラックスして楽しみ、照明スタッフはバンドを邪魔せずに、特別なショウに華を添えようと静かに自分達の仕事を全うする。それぞれがプロフェッショナルですね。
両者のその姿勢が素晴らしい効果を上げている場面は、約100分のライブの中でも数知れません。とりわけ、Anathemaの終盤、Vincentのロングシャウトからダイナミックに照明が切り替わってViolinソロへと突入した瞬間には鳥肌が立ちましたし、A Natural Disasterで観客に掲げさせたモバイルフォンのライトと雪片が舞うような照明のコラボは美しかったです。


手を変え品を変えたエンタメ全開ッ!って感じのショウとは距離があります。各曲が似たような雰囲気の演出になりがちですので、ライブ全体の起伏はそれほどありません。それでも、この美しいサウンドスケープとミュージシャンシップの高さを味わえる喜びはなかなかのもの。貴重な瞬間を切り取った逸品だと思います。

最後に曲目を載せておきます。

01.The Lost Song Part 2
02.Untouchable Part 1
03.Untouchable Part 2
04.Thin Air
05.Dreaming Light
06.Anathema
07.Ariel
08.Electricity
09.Temporary Peace
10.The Beginning And The End
11.Distant Satellites
12.Take Shelter
13.Internal Landscapes
14.A Natural Disaster
15.Fragile Dreams

※CDでは9曲目以降が2枚目に収録

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