IRON MAIDEN「THE BOOK OF SOULS」


IRON MAIDEN「THE BOOK OF SOULS」 (2015)

Bruce Dickinson(Vo)が癌の治療をしているというショッキングなニュースが発表されたのは、今年の2月頃だったでしょうか? その後、順調に回復していることが伝えられ、6月にはIRON MAIDENの新作がオリジナル・アルバムとしてはキャリア初の2枚組になることが公表されました。

2枚組!
11曲、92分に及ぶ大作主義!


こういった「気迫十分ッ!」な内容がファンからどういう反応を引き出すか、アーティストによってまちまちでしょうけど、今回のメイデンに関してはこと我が国(つーか、私の知る限りの狭い範囲/汗)では不安視する声が多かったように思います。ここのところのメイデンは大作志向が鮮明になっており「またか」という気持ちもあったし、妙に間延びした作風になってしまいそうな気もしたし、(数曲良い曲があったものの)前作「THE FINAL FRONTIER」(2010)の出来栄えにはガッカリさせられましたし。

ということで、再びKevin Shirleyをプロデューサーに迎えての、16作目のスタジオ・アルバム。「1枚目=6曲/2枚目=5曲」収録です。因みに本作のレコーディングは、Bruceの病気発見よりも前に済んでいたとのこと。

メイデン以外の何物でもない個性に貫かれている作品。

「あぁ、これこれ。聴いたことあるリフやフレーズ、展開だわ」と思う場面も多く、それを安心印と捉えるかマンネリと捉えるかで評価は変わってくると思います。いずれにせよ、2枚組というヴォリュームに抱いた不安が前提として存在する場合、実際聴いてみると「思ったより良いじゃん!」となるんだろうな、と。なんだか上手くノセられてるような気もしますが(笑)

私としては「悪くない。でも、メイデンの作品としてはそれほどでもない」って評価ですね。まぁ前作よりよっぽど良いですけど。
メロディの強力さより、曲展開の巧妙さで聴かせる曲が多い印象です。長尺曲の出来はなかなか。逆に、コンパクトな曲はフックに乏しく退屈で、即効性に欠ける傾向があるような…。何より聴いていて昂揚感を感じないのがイタいですね。具体的に言うと、DISC1の②Speed Of Light(これが先行シングルとは…/涙)と⑤When The River Runs Deep、DISC2の①Death Or Glory。アッパーな曲でアタリが無いのは、残念ながら前作と同様。

レコーディングは、BruceとAdrian Smith(Gt)の復帰作である「BRAVE NEW WORLD」(2000)の時と同じ、パリのスタジオに籠っての作業だったようです。その居心地の良い(とのメンバーの弁)スタジオで、曲を練り上げつつ録音していったことがこの作風に繋がったのか、どこか大らかで緩いアルバムですね。とても英国的な音だと思います。インタビューでは複数のメンバーが「スポンテニアス」という言葉を使っていますが、別の言い方をすれば「緊張感に乏しい」とも言えそうなわけで、……つーか、「スポンテニアス」って言葉嫌いなんだよオイラは!(笑)
結果、3名のギタリストのプレイに奔放さがあり、自由に気持ち良く弾いてる様子が伝わってくるかのようです。その反面、間奏の構築美はいま一歩かな。
Drの音はヘンに生々しい、ちょっと特徴的な音で、一定のリズムを刻むところではペタンペタンとやや表情に乏しい感じ。Baは……って思い返したら、今回はまったくSteve HarrisのBaプレイに意識が行かなかったわー。もしかして地味?
Bruceは癌の兆候があったとは思えないほど元気よく、若々しく、伸びやかに歌っています。彼のソロ・アルバムだと勘違いしそうになる瞬間も多々。歌メロ的には、前々作「A MATTER OF LIFE AND DEATH」(2006)~前作ほどじゃないけど、ハイトーンを酷使して“いっぱいいっぱい”になって、声からツヤや色気が失われている場面もちょいちょい見られますけどね。


そんな大物ゆえの落ち着いた作風の中でも、私はやっぱ(比較的)緊張感のある曲が好みなわけでして、その意味でも本作のキーとなる曲は次の三つだと考えます。どれも長いです。

一つめ、Steve単独作、13分半のDISC1④The Red And The Black。序盤はちょっとピースフルなメロディ使いでピンとこなかったりするんですけど、6分半を過ぎてから徐々に盛り上がってくる展開とメロディ回しは「これぞメイデン、これぞSteve Harris!」というべきもので、実に素晴らしいです。「ウォオー、オ、オオー」というライブでの観客参加を誘うパートもあり、本作中最もメイデンのメイデンらしい部分を感じさせる曲かもしれません。

二つめ、10分半のタイトル・トラック、DISC1⑥The Book Of Souls。ゆっくりと進行するエピカルな曲で、Bruceの伸びやかな歌唱と表現力の高さが存分に味わえます。特に、サビメロのドラマティックさは秀逸。終盤の丁寧にメロディを積み重ねるインスト・パートもさすがですね。

そして三つめ、18分に及ぶBruce渾身の単独作・DISC2⑤Empire Of The Clouds。1930年にフランスに墜落した英国製飛行船の事故に題材をとった(輸入盤なので対訳が分からん)バラード調の大作で、曲のムードを決定づけているピアノを弾いているのもBruce自身だということ。これは本人がメイデンの曲だと言おうが、どう聴いてもBruceのソロ作品のように思えますね。インスト・パートの劇的な展開は非常に聴き応えのあるものですが、それも優れた作曲術ゆえであって、楽器陣の活躍の賜物だとはあんまり感じないので。ただし、メイデンっぽくなかろうが、曲としてはすんげー良い。
前述のピアノの物悲しい響きに弦を絡めながら進行する歌のパート、ここが淡々としていながらまったく退屈に感じないのは、Bruceの適度に抑制されコントロールされた歌唱力・表現力ゆえ。歌が一旦終わって、7分過ぎからインスト・パートがジワジワと動きを大きくしてきますが、12分半で再び歌に戻ってくる頃にはストーリーに合わせてか緊張感がとても高まっています。そのままあっという間に聴き終えちゃうもんね。本作最大の収穫。


全体的にはDISC2の方が好きですね。メロディアスな歌モノ、③Tears Of A Clownも良いし。
成熟とか円熟とかいう言葉が似合う作風です。
「メイデンやっぱいいバンドだよな(再確認)」とはなっても、「とんでもない傑作ゥゥ、メイデンすげぇぇぇえええ!!」とはならない、そんな作品。まぁ、彼らゆえに最初っからそのハードルは高く、「ハードル」というより、むしろ「棒高跳びのバー」みたいな感じにはなってるんですけど(笑)。私、IRON MAIDEN好きですしね。ヴォーカリストの特性によって“好き”のレベルは異なれど、曲自体はどの時代のものも総じて。

曲を刈り込んで1枚にした方が良かったとは思いますけどね。

【お気に入り】
DISC2⑤Empire Of The Clouds
DISC1④The Red And The Black
DISC1⑥The Book Of Souls
DISC2③Tears Of A Clown

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COMMENT 2

DD  2015, 12. 09 [Wed] 19:59

 何度も聞いてますが、聞き手を挑発する(いわば、「聴くか、聴かないかはそっちの自由だ」的な)ボリュームがある、バリエーションに富んでる、等々で、前作から進化していて、かつ適切に進化してると感じます。(これって彼らのルーツ的な音楽も聞いてないと、突き放す人は多そう、とも感じました)

 最後の曲は、テーマの相似性から、Marillionの「Montreal」のMaiden版と感じたのですが、飛行機事故扱い、多くの人死亡、等の共通性で。

 全体を見ると、人の行いのもたらす影響が、全体のテーマとみます、これは彼らのどのalbumを聞いても共通してますし(しかも今回は古代から現代と幅広いし、かつ深い)。

 来日したら、これはこれで見てみようと思いますが(何曲やっても構わないですが、来年スタートなので、どうなるのか)。

 お気に入り・・Disk1・・2,4、Disk2・・1~3

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ヒゲ・スカイウォーカー  2015, 12. 12 [Sat] 08:47

DDさん、

自分達のルーツの音楽を咀嚼し取り込むことにおいては元々巧みなバンドでしたが、それも含めてメイデンらしい作品ではありますね。
因みに私はこの記事をアップしてからはほとんど聴いてないですね(笑)。まぁそれはメイデンに限らずですが。

ライブでの即効性については過去曲で補えるでしょうから、あとはどの曲をやるか、ですね。基本セットは変えないバンドですから、最初の公演でどうくるか??

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