和楽器バンド「八奏絵巻」

和楽器バンド_八奏絵巻
和楽器バンド「八奏絵巻」 (2015)

オリコン1位だそうで。
これほど“目の前”であれよあれよという間に売れていったアーティストは他にいないですなぁ。YouTubeを中心に、徹底してヴィジュアルに訴えかける広告宣伝効果が如実に表れた好例でしょうね。絵的に映えるメンバー揃いだったこと、その見せ方/魅せ方が上手かったことは勿論、個々のメンバー&バンド全体の優れたミュージシャンシップがあったゆえでしょうけど。

というわけで、男女八名構成による和楽器バンド、ほぼオリジナル曲による2ndアルバムです。
1st「ボカロ三昧」(2014)は全曲ボカロのカヴァーでしたが、私はその記事内で今後のオリジナル曲への期待を書きました。その後、「華火 -Hanabi-」(2014)、「戦 -ikusa-/なでしこ桜」(2015)という、オリジナル楽曲によるミュージック・ヴィデオ形式のシングルが発売され、その出来が良かったこともあり、次の展開を楽しみにしていました。しかし、思ったよりも速いペースでアルバムが届けられましたね。avex側にもこの(盛り上がっている)期を逃さずに畳み掛けたいというのがあったんでしょうけど。

結果、前作よりずっと良いですね。
元々私がボカロ曲カヴァーをあまり面白く思ってはいないという前提があったとしても。

鈴華ゆう子(Vo)の抜群の歌唱力&表現力だけで聴かせてしまう力はありますが、それだけじゃなくて色々と工夫して、バンドらしさやメンバー個々の色を出そうとしてるのが窺えます。そういう取り組みは前から見えていたことですけど、それがよりはっきりと伝わってくるような曲が多く、その試みが成功している感じ。
例えば、
①戦 -ikusa-②星月夜での男性陣による掛け声コーラスとか、町屋(Gt&Vo)がメインで歌う⑧郷愁の空③Perfect Blueの超早口ラップ調Voパートとか、和楽器を有効に使ったキメとか…etc…。
黒流(和太鼓)が作詞作曲した⑤鋼 -HAGANE-なんて、技巧的にも相当なもんですが、デスVoまで飛び出してくる詰め込み具合と目まぐるしさがあります。
⑩白斑の一風変わった妖しいメロディ使いと、ちょっとDjentっぽさも感じるリフ&リズムも面白いですね。ファルセットを巧みに使った歌メロも◎

クレジットを見る限り、音源制作は町屋とゆう子と亜沙(Ba)が中心になっているようです。特に今回は町屋、大活躍。ギタリストとしての貢献も勿論大きいんでしょうけど、それよりもコンポーザーとして踏ん張ってますね。
また歌唱面でも、上記③⑧ではメインVoを担当、他の曲でもコーラスでゆう子嬢を後方から支えています。は哀愁と懐かしさを感じる曲調が意外にも彼の声にマッチしており、息継ぎは相変わらずヘタクソながら、歌唱そのものはなかなか良い。割とシンプルなアレンジが逆に新鮮ですしね。このバンドでやる必要があるかといったらよく分からんですし(笑)、町屋はコーラスの方がその良さが出ると思うんですけどね。


相変わらず情報量のとても多い作品ですが、歌メロがキャッチー&メロディアスで耳を引くので、それほど聴き疲れしないというのは強み。逆に聴き方によっては、色んな音があっちこっちで鳴っていたり予想もしないところから飛び込んできたりするから、繰り返し聴いても発見がありますし。相変わらず、和楽器の配分と、それをエレキ楽器以上に目立たせるミックスが見事で、それゆえに実現できる音楽性ですけどね。

しかしゆう子嬢のヴォーカルは素晴らしいね。詩吟の師範という経歴・スタイルを活かした歌唱法なのはご存じの通りですが、その独特の調子がフックになって、普通のポップス/ロックとは一線を画したこのバンド最大の武器になっていますし。かと思えば、④追憶のような素直な歌唱を聞かせたりと、自身のスタイルが持つ「クセ」の濃度を曲やパートに合わせて自由自在に変化させられる器用さがある。彼女の歌とそのバランス感覚が、和楽器バンドの音楽をマニアックな領域までは行かせないで、広義のポピュラー・ミュージックに繋ぎ止めているんじゃないかと思うんですよね。
それゆえの「最大の武器」。


ボーナス・トラック1曲を含む全15曲という、少なくはない曲数のアルバムにおいて、構成上の肝となるのは次の2曲の配置でしょうか。折り返しポイントとなる⑥風鈴の唄うたい、それと詩吟をフィーチャーした小曲⑨暁ノ糸。前者はゆう子作、当然のように超華風月タイプです(笑)。後者は華風月なら穏やかさを前面に出しそうなところ、緊張感漂うアレンジなのがバンドならではの差別化でしょうか。
共に、勢いの良さやライブでの盛り上がりを想定した仕掛けを前面に出しているアッパー・チューンやJ-POP寄りの歌モノとは異なり、良い意味で箸休め的な休息やリフレッシュ感を与えてくれる曲です。
あとは、⑪なでしこ桜の聴き応えのある叙情も、アルバム終盤のラストスパートの手前でええ仕事してまっせ。

そして、そのラストスパートたる畳み掛けがまた素晴らしい。
メロスピじゃないんだけどそれ系の音を想起させるメロディ展開を持つ⑫反撃の刃(しっかり飛翔系のGtソロも収録されてるし)、彼らの人気を爆発させたボカロ・カヴァー⑬千本桜、軽やかさと華麗さ、ポップ感を見事に融合させた⑭華振舞
特にはいいいねぇ。作曲したのは外部作家のCue-Q(作詞は箏のいぶくろ聖志)ですが、気品のある歌メロといい、尺八によるテーマメロといい、器楽的な拮抗といい、醸し出すムードといい、この曲こそ和楽器バンドでしか為し得ないものだと思いますね。

ボーナス・トラックは、これもボカロ・カヴァーの⑮地球最後の告白を。ボカロ反対派(なんだそれ?)の私ですが、この曲でのストレートなVoはすげぇイイ。ファルセットちょい手前のハイトーンの捌き方が驚異的に巧いですね。最後の「言え、たよぉ♡」の語尾がブリっ子過ぎてイラつきますが(苦笑)
それこそバンドでやる意味が無さそうな、「ゆう子ソロ」って感じの曲で、それゆえにボーナスなのかもしれません。


本作が、今後の彼らの作品のベース、基本の根っこ部分になりそうな感じもします。手堅くまとめた、というと嫌みに聞こえますが、その実、その手堅さは見事。
超強力作。

【お気に入り】
⑦華火 ←これ最強。
⑭華振舞
①戦 -ikusa- ヘドバン!ヘドバン!
⑮地球最後の告白を
⑫反撃の刃
②星月夜
⑩白斑


追記ですYO!HA!YO!HA!
   ↓


私が買ったのは【初回生産限定盤type-B】という、ライブDVDが付いたヴァージョンです。今年の1月7日渋谷公会堂でのライブ映像12曲に、5月10日に台北で行われたライブ1曲、計13曲が収録されています。
彼らの初の映像作品である「ボカロ三昧大演奏会」もDVDで買ってはあるんですが、(例の如く?)まだ見てません。ですので、今までに一度だけ見たライブ(メジャー・デビュー前)を除けば、この付属DVDが初めてのライブ映像体験となります。
さて。

音悪いなー(苦笑)

色んなアーティストの初回盤CDによく付いてるライブDVD、最近見てるやつはなんだかほとんど全部音が悪いんですけど。何コレ?呪い?w
打楽器とエレキ弦楽器の音がボワンボワン拡散しまくってますわよ。あと、鈴華ゆう子(Vo)がハイトーンかますと音が割れるw
1曲だけ入ってる台北公演の方が音が良いような気もするけど、最後に収録されてるから単に(音の悪さに)慣れて気にならなかっただけかも。

ただ映像はとても良いです。
こういう映像作品が生のライブより優れている点は、メンバー(特に演奏陣)の細かい動きが把握できることと、自分が客席/フロアから観る視点以外の角度からステージを捉えることができることでして、その点については文句無しですね。
1曲目から蜷川べにの超高速三味線ソロなんぞ見ることが出来て、さいこーです(べに、メイクが白塗り過ぎないか?w)。「ここでこの楽器がこういう風にプレイしてるのか」と把握できることや、間奏での各楽器のリレーっぷりが手に取るように分かるので興奮しますなぁ。立体的なステージの造りも見応えあるし。

戦 -ikusa-の時に神永大輔(尺八)が片足立ちでソロをとっているのはIan Anderson(JETHRO TULL)オマージュですか?(違)
・モダンなテイストの箏のソロでは、いぶくろ聖志がなんだかクラブ(語尾上げ)のDJのようで、なかなかのチャラさ(笑)
・町屋(Gt&Vo)が(ライブでも)早口Vo上手くってビビった。

しかし、異様に巧いバンドだ。プレイも、魅せ方も。
特に、(特典とはいえ)映像作品としてパッケージするのにどれだけ修正してるのか分かりませんけど、ゆう子のVoの精度は驚異的。
つーか、もっとゆう子さぁあんを映して!(笑)


「和楽器バンド大新年会2015」
01.六兆年と一夜物語
02.華火
03.星月夜
04.戦 -ikusa-
05.なでしこ桜
06.箏 Solo
07.郷愁の空
08.虹色蝶々
09.脳漿炸裂ガール
10.セツナトリップ
11.天樂
12.千本桜

「和楽器バンド台北大演唱会PREMIUM ENCORE」
13.チルドレンレコード

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COMMENT 2

タケ  2017, 01. 18 [Wed] 21:02

No title

今更ながら去年末に古本市場で買いました。初回入手困難なのでラッキーでしたけどブルーレイ付という。(見れない環境なので)
私も戦と反撃の刃がお気に入りです。

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ヒゲ・スカイウォーカー  2017, 01. 19 [Thu] 21:36

タケさん、

コメントありがとうございます。
2015年発表作なので、まだまだ「今更」というほどではありませんよ、私のようなオッサンの時間感覚では(笑)。何年も前にリリースされた過去作も普通に買いますし。ただ、次のアルバムが再来月に出るようですね。
因みに、Blu-rayを見る環境を整えていないにもかかわらず、「そのうち見るだろう」と考えて次々とソフトを買っては積んでいる馬鹿は私ですw

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