Nozomu Wakai's DESTINIA「Anecdote of the Queens」


Nozomu Wakai's DESTINIA「Anecdote of the Queens」 (2015)

ギタリスト・若井望のソロ・プロジェクト、昨年発売されたデビュー作「Requiem for a Scream」に続くミニアルバムです。孔雀。

ウチのブログでも既報の通り、今回は女性Voをメインに据えた作品ということで、前作にコーラスで参加したFukiと榊原ゆいの2名をフィーチャーしています。リズム隊は前作から引き続きの顔ぶれ、また、Keyはふっきーと同じLIGHT BRINGERからMaoが参加しています。
以下に、若井以外の参加メンバーをまとめておきます。

 Vo:Fuki
 Vo:榊原ゆい
 Ba:寺沢功一
 Dr:宮脇知史
 Key:Mao

ふっきーと榊原、それぞれ3曲ずつメイン・ヴォーカルを担当。ふっきーは、榊原曲のバラード④Until That Timeのサビでもデュエットしているので、実質3.5曲という感じですが。あと、ボーナス・トラックとして、前作に参加したRob Rock(IMPELLITTERI)が歌った曲も収録されてますが、それは後述することにします。

歌詞は前作同様、全編英詞。
願わくは、ふっきーって英語の発音ヘッタクソなので(汗)、ライブはともかく新譜では日本語詞の曲が用意されていてほしいですね。
…と書いた私の懸念がどストライクで当たってしまった格好ですが、まぁ予想はしてたな(苦笑)。
この(ソロ)プロジェクト自体、「王道HR/HMの継承」的位置付けができるものでしょうし、前作の作風が奇を衒っていない、ある意味典型的なHR/HM楽曲揃いだっただけに、今作に関しても「英語詞で作るのは当然だろうな」という、諦めにも似た(笑)思いはありましたし。
しかし、若井の曲作りはまず伝えたいテーマありきとのことですが、それならなおさら日本語で詞を書けばいいのにね、と思ったりも。

「継承と再提示」


これはDESTINIAの特徴みたいなもんだと捉えていますけど、作風は前作より幅広くなって、かつ、より柔和になってるかな。それは歌い手の性別に依るところも大きいんですけど、それだけじゃなくて、方向性が正統派メタル直球というより、80年代ハードロック/ハードポップ方向にシフトして作られたように思います。LAメタルっぽい感触も強くなり、逆にジャパメタ臭さは薄くなった。
ふっきーの歌った①Breaking the Fire⑤No Surrenderが「前作タイプ」のストロングなアッパー・チューンですから、そこまでガラリと変わったわけじゃないはずなんですけど、他4曲のVoのハマり方や音作り等々を合わせると、上記印象となります。
で、音作りなんですけどね、これ、80年代BON JOVIのようですね。写真に例えていうとちょいソフト・フォーカス気味というか、オーヴァー・プロデュース気味というか、Key周りの装飾で綺麗かつゴージャスに包んでいる感じ。
それでいて、ツボを得た曲作りをする(別の言い方をすると、優等生過ぎる)若井作品のことですから、「80年代アメリカンHR/HMの隠れた名曲を引っ張り出してきたカヴァー集」とか言われても違和感無い感じの作品に仕上がっています。

革新性とは無縁で、創造したいであろう理想のHR/HM像に忠実な姿勢は相変わらず。ということで、今回もめっちゃよく出来た楽曲揃いですわ。
その安定感を退屈と捉えなければ。
枠から決して逸脱しないような“型”に物足りなさを覚えなければ。
そして、前作のパワーメタリックな部分を過剰に求めなければ。

若井望はギタリストというよりコンポーザーというのが私のイメージですが、こういった正統派HR/HM~メロディック・メタルでギターの果たす役割が大きいってことは十二分に理解しているんでしょう(何故か上から目線)。ギター・パートはなかなか充実しています。この点は前作以上かもしれません。あくまで歌メロ中心の音楽なので長尺で弾きまくることはありませんが、楽曲の中でハイライトとなるソロがきっちり収められているのは嬉しいポイントです。
また、若井本人の性格が出ているところかもしれませんが、細かいところまで作り込む作曲術ゆえに、Maoのセンスが生きていない気はします。彼(Mao)が演奏していようがいまいが、Keyパートは既にカッチリ出来上がっちゃってる感があるので。ちと勿体ない。


「さて、ふっきーの話でもしようか」
心配された英語詞問題(大袈裟)ですが、一聴すると拒否反応が先立つものの、数回聴いてみるとそれほど気にはならなくなってきました(それはふっきーだけでなく、榊原についてもそう)。ただ、それでいて彼女の魅力が完全に引き出されているかというと、そんなこともないかな、というところ。

前述のように①⑤は前作からの連続性を感じさせる正統派HMナンバーで、演奏面での聴き応えもあってカッコイイです。どちらかというと後者の方が、よりふっきーのパブリック・イメージ(ラブリーとかドル箱とかあんきもとか…)に近い、“突き抜け”系のパフォーマンスが収められていますかね。そういう彼女らしい歌唱がありつつ、ではちょっと「軽さ」も意識したような歌も収められていたりと、幅広さはある。
でも、違和感も、同時にある。
伸びやかな歌唱だけがふっきーの強みじゃないのは分かってるし、それが実践されてるようではあるんだけど、サンホラの憎しみを花束に代えての方が69倍良さを引き出してたように感じますね。

なんですかね、コレ、音作りの問題かな?
80年代HR/HM風の音作りについては上に記した通りですが、これがふっきーの声に合ってるかと言うと、私としては「否」という感想なんですよね。エフェクトをかましてるような、うっすらとKeyが被ってるような、そんな音像なので、生々しさと力強さが十分には伝わってこず、歯がゆい思いをします。声の輪郭がイマイチはっきりしない。まぁ、生々しい音作りならそれはそれで、英語の発音の拙さがもろに伝わってきてしまってNG!かもしれませんので、痛し痒しかも(笑)

そういう音作りゆえか、私が一番ハマっていると感じたのは、ミドルテンポの哀愁ナンバー③Love to Love。力を抜いたしっとりした歌唱が映えています。切なげなサビはとてもいいね。メロディ的には大好きなタイプだし、彼女の良さも引き出していると思う。ふっきーのVoって、“どメタル”な曲よりちょっとポップさがある曲の方が光ると思ってるんですけど、この曲は正にそう。すげぇイイ。

聴く前は、ふっきーが主役の「Fuyuki Tenge's DESTINIA」みたいになっちゃうんじゃないかと思いきや、そんなこともなく。まぁ考えてみりゃあ、もともとふっきーの良さを引き出す為のプロジェクトじゃないから、当たり前なんだけどさ(笑)
でも仮に、仮にね。ふっきーがソロアルバムを作るとしたら、若井望がプロデュースするってのは面白そうな気はしてる。歌詞は完全にふっきー自身が書いて、かつ日本語詞という前提はあれど、ね。


その点(どの点?w)、声優さんというのは器用なんでしょうかね、榊原ゆいのパフォーマンスはとても良いです(英詞のことは置いといて)。彼女の声にあった曲が用意されているということもあるし、音作りの方向性もしかりですが、本人の柔軟性のおかげもあると思います。⑥Rock is Goneの大らかさなんて特に。
「80年代」とか「LAメタル」というキーワードを最も強く体現して、同時に本作の作風を代表していると感じるのが②I Miss You。華やかさと切なさが同居するこの曲は、個人的に大きな収穫の一つでした。ちょい軽めの声と歌い方が曲に完璧に合ってる。Gtソロも◎。
これまた80年代風のバラードは、基本に則り過ぎな感もありますが、サビのデュエットはとても良いですね。榊原&ふっきー、各々の個性は残しつつも二声が絶妙に溶け合っていて。


そんなこんなで6曲を聴き終わると、ボーナス・トラックして登場するのがRob Rock版の⑦Breaking the Fire
もうね、冒頭の「イヤァァァァアアアアア!!」だけで持って行ってしまいますね。それほど燃え上がるような歌唱じゃないにも関わらず、どう聴いてもふっきーよりハマってる。このカッチリ感を目の当たりにすると、若井の書く曲ってのはほんと優等生だなと感じますね。


ふっきーが歌っていることに対する過剰な期待が応えられたわけではありませんが、個人的には徹頭徹尾ジャパメタじゃなかったのは良かったかな。かなり楽しめました。
ただ、若井望は、器用に歌い手に合わせてくる反面、最後の一線ではどうにも頑固で譲らない部分があるような…??。今後起用するヴォーカリストによって、(メロディック・メタルの範囲内で)バラエティ豊かで安心印の楽曲が楽しめそうな気はしますが、何か面白い化学反応が起きて凄まじい名曲が生まれてくるのは期待薄、というかね。

【お気に入り】
③Love to Love
②I Miss You
これ以外も良いけど、ハマり具合としてはこの2曲が飛び抜けてる。


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