APOCALYPTICA「SHADOWMAKER」


APOCALYPTICA「SHADOWMAKER」 (2015)

フィンランド産、チェロ・メタル・バンドの8thアルバム。私が買ったのは、ボーナス・トラック2曲が追加された計12曲入りCDです。

今までに、歌い手・演奏者問わず、様々なゲストを迎えて音源制作を行ってきた彼らですが、今回初めてヴォーカル・パートを1人に絞ってアルバムを発表してきました。Voして抜擢されたのは、Franky Perez。SYSTEM OF A DOWNのDaron Malakian(Gt)のサイド・プロジェクトであるSCARS ON BROADWAYで、リズムGtとVoを担当していた人(のよう)です。Frankyは“正式”なのかどうかは不明ながら、APOCALYPTICAのメンバーとしてクレジットされていますね。

その事実から、そしてFrankyの出自からも推測できることかもしれませんが、歌モノHR/HM、しかもアメリカナイズされた音楽性にシフトしています。MVとして先行公開された②Cold Bloodや、「LOAD」「RELOAD」期のMETALLICAを彷彿とさせる⑦House Of Chains、ウネウネのたうつヘヴィロック⑨Come Back Downあたりは、その代表的な曲。元々保守的ではない、音楽的変化を厭わないバンドだと捉えていますが、今回のこれはかなりドラスティックな変化なのではないかしら。

思えばAPOCALYPTICAは、その特異な楽器編成と音楽性からか、「メタルバンドであること」「チェロの響きを活かすこと」、この二つの命題の間で板挟みになることを運命付けられていた感があります。

・チェロにエフェクターをかませてGt/Baと変わらない歪んだ音を出すこと。
・Drビートの導入によるリズム面の強化とアグレッション増加。
・ヴォーカリストを始めとする様々なゲスト・ミュージシャンの参加やコラボ。

これらバンドが通ってきた道程は、可能性を追い求め、変化を許容し、繰り返しを望まないというメンバーの意向が反映されていたものかもしれません。
ただ、個人的にはその試行錯誤が、上記二つの命題の間でどっちつかずのまま中途半端に漂っていたような気がしていたんですよね。特に「WORLDS COLLIDE」(2007)と「7th SYMPHONY」(2010)の2枚ではそれが顕著に感じられ、出来は悪くないものの決め手となるものがないだけに絶賛もできないという…、そんな評価でした。

で、本作。

吹っ切れたな。

彼ら自身がバンドの方向性について迷っていたかどうかは知りませんが、私には迷いを吹っ切った作風に感じられました。同時に、「メタルバンドでありつつチェロの響きを活かす」という点では一定の答えが得られたような気がします。

ロマンティックな欧州風味はさらに後退しましたが、歌モノであることがチェロの存在を逆に際立たせている、生のチェロの響きが復活している、そんな風に感じました。
今までの彼らならば、「この曲はメタリックに攻める曲」「この曲はチェロの響きを生かしたバラード」という風に分けて考えて、音色もそれに合ったものを曲毎に適宜使い分けていたと思います。でも今回は、1曲の中にGtやBaにしか聞こえないメタリックなリフと生のチェロの響きを活かしたメロディ、その両方を配置することで二面性(メタルバンドであることとチェロを有する楽団であること)が両立され、バンドのアイデンティティが明確に浮かび上がってきたように思います。
また、その2つの使い分けがツボを得ているので、インスト面での聴き応えがアップ、より立体的なアンサンブルを聴かせてくれます。

⑤Reign Of Fear⑧Riot Lights⑪Till Death Do Us Partといったインスト曲はどれも長尺であり、性急な曲調で緊張感を煽ったり、ここぞとばかりに北欧叙情溢れるロマンティックな旋律を奏でたりと、チェロという楽器の特徴を全て引き出したかのような聴き応え満点のドラマを提供してくれます。
また、曲によってはプログレメタル的趣きや、チェロとドラムの拮抗を感じさせるパートがあることも特徴で、特にタイトル・トラック③Shadowmaker(この曲は歌モノ大作)の2分過ぎからの約4分間のインスト・パートの充実はその最たるところ。こりゃ凄い。

バラードも、重厚な④Slow Burn、優しげな⑥Hole In My Soul、朴訥な⑩Sea Song (You Waded Out)、Frankyの声が寂寞を感じさせる終曲⑫Dead Man's Eyesと、良曲が揃っていると思います。


バンドの意欲的な姿勢が“吉”と出た好盤だと思います。のMVだけで判断するのは勿体無い作品ですね。なんせ、シングル向けにコンパクトにまとまっており、如実に“変化”を感じさせる曲ではあるし、Franky Perezのパフォーマンスを知るには手っ取り早いものの、この曲がアルバムで一番無難でつまんない曲だし(苦笑)。

【お気に入り】
③Shadowmaker
④Slow Burn
⑫Dead Man's Eyes
⑪Till Death Do Us Part
⑤Reign Of Fear
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