佐々木譲『警官の血』

佐々木譲_警官の血
佐々木譲『警官の血』 (新潮文庫、上・下)

佐々木譲の警察小説『警官の血』を読みました。「このミステリーがすごい!」第1位になった作品ですね。
スチュアート・ウッズの『警察署長』にインスパイアされた作品なので、先に『警察署長』を読もうと探してみたが、見当たらない…。確かに購入済みなのに。どこのダンボールに入っているのやら…。
というわけで比較しての感想は書けません。


血か、運命か。
三代の男たちは警察官の道を選んだ。

初代の断ち切られた志、
二代を蝕み続けた、苦悩、
三代が拓く、新たな道。



最近は警察小説ばかり書いてるような佐々木譲ですが、『笑う警官』と『制服捜査』を読んで私はあまり面白いとは思いませんでした。筆者の冒険小説はとても好きなんだけど。ですのでコレも面白くなかったら、筆者の警察小説とはバイバイしようと思ってました。

でも、これは面白かったですね。とても。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
 ↓

この作品を(謎解き)ミステリとして読むと失敗すると思います。一応三代に渡って、物語に通底する謎はあるのですが、ぶっちゃけそんなのどうでもいい。大した謎かけになっていませんし。しかしながら派手な展開はあまり無くとも、これはもう作者の筆力と言うしかない面白さです。警察組織という機構、うねりに飲み込まれた三人の物語に引き込まれます。押しつけがましくない時代背景の描写も好印象です。

初代の断ち切られた志、
二代を蝕み続けた、苦悩、
三代が拓く、新たな道。


先に引用した、下巻のタタキ帯の文句ですが、これがなかなか秀逸だと思います。
「三代が拓く、新たな道。」ってのに何やらクサく前向きな清々しい結末を期待するかもしれませんが、全然そんなことありません。むしろそれがいい。加賀谷を“売った”後の和也のしたたかな吹っ切れっぷりこそが、本作をして単なるお涙頂戴モノに陥ることから回避していると思います。

個人的にはもっとボリュームアップして、各エピソードを丁寧に描いても良かったかな、と思います。例えば、清二が「人情味溢れる駐在」だった事をたった一つのエピソードだけで印象付けるのは無理がありますし、民雄の潜入捜査における神経すり減らしボロボロ具合や和也と加賀谷とのギリギリのやり取りや葛藤を細かく描けば、さらに素晴らしい出来になったのでは。あと女性キャラの魅力の無さは少し気になりました。第一部の多津はともかく、第二部の順子と第三部の由香の影の薄さと言ったら……。
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