Unlucky Morpheus「VAMPIR」


Unlucky Morpheus「VAMPIR」 (2015)

ふっきーこと天外冬黄(Vo)と紫煉(Gt, Vo, Ba&Key)によるUnlucky Morpheus(あんきも)、「affected」(2013)に続く2ndオリジナル・ミニアルバム。
2015年の年間ベスト記事でも選んだ作品です。現時点でのあんきもの最高傑作だと思いますね。名盤でしょコレは。

紫煉が在籍する電気式華憐音楽集団の楽曲である⑥Vampireのカヴァーを含む、全6曲。30分に満たないコンパクトな構成ですけど、その中身は実に濃厚。それだけに、このくらいの曲数に収めたのは正解だと思いますね。

カヴァーする対象としてを選択していることにも通じるように、アルバム一枚丸々のテーマは「吸血鬼」です。あ、アルバム・タイトルもそのまんまか。
そのテーマ設定ゆえか、前作にも増して暗く激烈な叙情が迸っております。合わせて、音楽性もちょっと変化していますね。ストレートなメロスピ色が若干後退し(ただ疾走感は堅持)、代わりにシンフォニック・メタル色が一気に強まりました。これは朗報。「affected」の記事でも書いたように、直球ど真ん中のメロスピってふっきーには正直合ってないと思うから。勿論、この変化は「吸血鬼」というテーマを選んだことと密接に関係していると思います。
ちょっとした変化です。でも、このちょっとの変化がめっちゃおっきい。いや、変化というかシフトと言った方が正しいかもしれませんね。


制作環境が力の入ったものになっています。エクストリーム・メタルを手掛けたら国内屈指のエンジニアであるSTUDIO PRISONERのHiro氏がミックスとマスタリングを、ラブリーやドル箱でもお世話になっている安保一生氏がヴォーカル・ディレクションを担当。
サウンド・プロダクションがグッと向上しましたね。音楽的にはより多彩で複雑になっているのに、それら要素を余さず把握できるようなクリアな音像。HR/HMを手掛ける日本人のエンジニアって、どうしても(海外勢に比べて)ドラム・サウンドの録音に物足りなさを感じることが多いんですが、STUDIO PRISONERで生み出される音はいつも高いクオリティを備えており、安心します。

また、先述の音楽性のシフトも影響しているでしょうけど、安保氏のディレクションのおかげでしょうか、ふっきーの歌唱と演奏が乖離してない。Voとシンフォニック・メタルな演奏が自然に馴染んでます。これはデカいですよ。めっちゃおっきい。
以前のあんきも作品のVoパートには単に声を張り上げてるだけと感じる場面がありましたが、それが無くなった。ラブリーではMao(Key)がバックの演奏とVoとの接着剤の役割を果たしていますけど、本作でも上手くKeyやゲスト参加のJill(Violin/Rose Noire, Hollow Mellow)がそこらへんの働きをしているってのもあるでしょうね。なんせ「シンフォニック・メタル」なので、Keyや弦は大活躍してしかるべきですから。
前作の記事では「Voと演奏を繋ぐポップさが欲しい」と書きましたが、本作ではその手法とはベクトルの異なる、シンフォ方向に突き抜けることで、両者の橋渡しを実現した格好ですな。


テーマに沿った歌詞と歌唱っていうのはふっきーの得意技なわけでして、本作でもその美点は不変。むしろ過去最強レベルでの発露をみせており、嬉しくなってしまいます。
最初、(聴く前に)歌詞を読んだ時には言葉遣いがちょっと「固い」かなと思いましたが、いざ音楽の中で聴くとさすがふっきー、おれたちにできない事を平然とやってのけるッそこにシビれるあこがれるゥ的に作風に完璧に合った言葉選びになってるし、メロディへの乗り方も申し分ありません。韻の踏み方の妙も含め、天才的センスだわやっぱ。
曲名がドイツ語の②Opfer⑤Angreiferの元ネタは、ジャケ画にも使われた荻原敦氏の漫画『Blood Smoker』。フランス語タイトルの③La voix du sangは、ラブリーの名曲カルンシュタインの系譜と同じ、吸血鬼カーミラの話。④Phantom Bloodは…、、なんだこりゃ、JoJo第1部かな? 曲名だけ各国の言葉で実際の歌詞は日本語ですが(ふっきーは外国語で歌わなくて正解)、こういう知的好奇心をくすぐるような仕掛けは好きですね。まぁふっきーヲタク気質だからなw

テーマがテーマなだけに、彼女のポジティヴでキュートさを前面に出した歌唱を聴くことはできません。でもそれはそれで、“シリアスふっきー”としての魅力が全開なので、全く問題無し。それどころか、ここに収められた歌唱は、今までにないほどの緊張感と威厳に満ちており、この孤高の佇まいと凄みは余人をもって代え難いと言い切りたいほどです。ほんと凄いよ、このアルバムの歌唱は。


テーマに則って統一されたムードを放つ楽曲が揃っているため、1曲ずつ挙げて紹介することはあまり意味を為さないかもしれません。イントロSEである①Vampir、カヴァー曲を除くと、実質的には4曲。そのどれもが名曲と言ってもよい出来だと思います。メロディ、アレンジ、歌唱、演奏、全てにおいて異常なほどのキレをみせてますわ。
Drの森下フミヤの実力や個性のおかげもありますけど、演奏はパワーメタルというよりもはやエクストリーム・メタルの域まで達しており、シンフォニック・ブラックメタルのような雰囲気もあります。特にかな。には紫煉のグロゥルも入ってますから、なおさらそんな感じですね。
また、は7分を超える本作唯一の大作と言ってよい曲ですが、一筋縄ではいかない構成というか、起伏に富んだプログレ懸かった曲調がシンフォニック・メタルという方向性と完全にマッチ。今までも長尺の曲はありましたが、これは一つの到達点と言ってよい出来なんじゃないですかね。


とても、とても素晴らしいです。
改めて言いますが、最高作でしょう。

【悶絶】
全編悶絶ハリケーンだが、
④Phantom Blood
③La voix du sang
この2曲は狂おしいほどの叙情とギリギリの緊張感がとりわけやばしヤヴァし。
における、下々を睥睨するような威圧感すら覚えさせる歌唱と泣きまくりのGtワークは、ふっきー&紫煉、双方にとってのベストワークでもあるんじゃないのかな。

スポンサーサイト

COMMENT 0