Sound Horizon「9th Story 『Nein』」


Sound Horizon「9th Story 『Nein』」 (2015)

Sound Horizon、メジャー・デビュー10周年だそうな。
本作は、ストーリー・アルバムとしては8作目のリリースとなりますが、まだ「8th Story CD」が作られていないため、一個飛ばしで9番目が先に来たようです。というか、サンホラにストーリー物以外のアルバムがあるのかどうか、知らないんですけど。

ウチのブログでも既報の通り(→コチラ)、本作にはLIGHT BRINGERのFuki (以下「ふっきー」とキスる 記する)が<Vocals & Voices>として参加しています。総勢20名近い中の1名であるだけに、どれほどのパートを任されているのかサッパリ分かりませんでしたが、でもこりゃあ発売と同時に買うでしょ。ウチのブログ的にはマストバイ。
もし、ふっきー参加という要素が無かったら、買っていないか、もしくは中古でもう少し安くなってから手に入れようとしていたでしょうね。

サンホラのCDは本作の他にあと3枚持ってるはずで、この記事を書くにあたって聴きなおして(モノによっては初めて聴いて)みようかと思っていましたが、どこにあるか見つからないので諦めました(笑)。国内アーティストはCDラックの整理が済んでいなくて、何が何処にあるか分かんねーのよ(苦笑)。まぁどこかのCDタワーに積んであるか、ごちゃごちゃに収められてるラックのどこかでひっそりと眠っているんでしょう。

…という極めて個人的な事情はともかくですね、「聴きなおしてみよう」と思ったというのも、本作でのストーリー(=楽曲)が「過去の話の一部設定を“否定(Nein)”したらどうなるか」、という仮定のもとに再構築した内容らしい(ってAmazonのレビューに書いてあったよ/笑)からなんですけど。
でも私、過去曲の内容って把握してないから、ナニがどうなったか比較検討ができないんですよね。過去曲のメロディもあちらこちらに出て来るらしいがそれも分からんです。ですので、過去を俯瞰した上での、本作の特徴や作風みたいなものは述べられませんですわ。

サンホラ作品のストーリーに興味があるかっていうと、ズバリ無いので(笑)、本作の設定(設定否定→再構築)を語ろうにも語れないんですが、元々物語りが長大過ぎて(もしくは、そうであるように感じられて)どうも追う気にならないんですよね。私は(日本語で歌われてる限りは)割と歌詞も読んでいる音楽リスナーだと思いますが、サンホラの場合、ブックレットの歌詞が読めねぇもんだから、その気にならんというかナッハッハ。能動的な聴き方ではなく受動的ではありますが、音楽だけでもいいっしょ、という感じです。
因みに「ブックレットの歌詞が読めねぇ」というのはどういうことかと言うと、歌詞が図になっていたり、フローチャートのようになっていたり、登場人物の台詞が頻繁に挿入されて曲が今どこまで進行中なのか見失ったり、まったく違った読み方をさせる単語や文章があったり…etc…と、一筋縄ではいかないことに依ります。
ある単語に違う読み方を当てるのはままあることですが、サンホラの場合はちとレベルが違う。「時代」を「トキ」と、「宇宙」を「ソラ」と、「本気」を「マジ」と読ませるのがレベル1ならば、「挫けそうな心を励ましてくれる存在」「くちずさむうた」と読ませ、「経営的判断に基づく取捨選択」「びじねす」と読ませ、「子供に関する福祉団体に長年勤める優しい人であり後に生涯の伴侶ともなる最愛の男性」「かれ」と読ませやがるサンホラは、もはやレベル99でしょう(笑)。
ここまで徹底しているのは他のアーティストにはない特徴だと言えるかもしれないですけど、個人的には奇を衒っているようにも思えてちょっと苦手。ただ、聴覚と視覚の両方を用いて同時に2つの情報を伝えることができているので、その効果はデカいですね。
あと、台詞にしろ歌詞にしろ、言葉使いがチャラいのが少し気になりました。初期作はもうちょっと気品があったように思うんだけど…?

…とそんなわけでして、ストーリーや曲の背景を読み解く根気は私にはありませんが、どうやらサンホラ(というよりRevo)の提示するミステリ的側面に魅かれる人は多いようで、色々考察したブログやら掲示板やらが検索掛けるとワサワサ見つかってきます。
そんな考察ブログ様をチラッと拝見しましたが……、こいつはすげぇぇぇえええ!各曲名の頭文字がアナグラムになってるだとか普通気づかねぇっすよ!(笑)
しかし謎を仕掛ける方も、それを読み解く方も、こりゃ大変だわ。


サンホラの基本的な音楽性は、「シンフォニックな味付けのされたファンタジックな世界観を持つポップス/ロック」だと思いますが、それを幹にして枝葉はHR/HM・民族音楽・クラシック音楽・プログレッシヴロック・電子音楽・ゲーム音楽・アニソン…etc…と、どこまでも広がって行きそう。そして、それら様々な音楽要素が1曲の中に混在することが多いですし、ストーリーの進行に従って曲調も変わるので、どういうタイプの曲か一概に説明できない(=説明できるスキルがない)のがもどかしいですね。どれもが全部入り、的な。ファンにとっては、それが面白いところなんでしょうけど。あと、1曲がかなり長いです。8分台が普通、みたいな。
さてと、
以下、1曲ずつコメントです。ふっきー関連のところのみやたら熱くなってる感じですが、気にしなさんな(笑)

①檻の中の箱庭
なんかミャーミャーいう曲。
どうやらリード・トラックのようでして、始まった途端にaccessかと思いましたよ(笑)。サンホラって、こんなシンセバリバリの音楽性だったっけか?…という。
「ミャーミャー」いってるのはどうやら猫のようです。なぜ猫なのか分かりませんが、とにかく猫です。確かにジャケには猫耳着けた人(?)がいますし、ブックレットにも猫が描いてあります。私には猫耳なんぞで萌える属性は無いので、別にふっきーが猫耳着けて「ミャー♪」とか言ったって全く動じない自信はありますが(キリッ)、橙・黄色・黄緑・緑の4匹(四姉妹?)いるうちのオレンジ猫の声を、どうやらふっきーが担当しているようです。ですが、歌う歌詞はといえばほとんどが「ミャー」ですし、打ち込みが隙間無く敷き詰められているような曲なので、正直彼女の声だと判別できません。「ん?今のは…ふっきー?」くらいに思う箇所もありますが、気のせいかも。因みに、猫さんはあくまで脇役であって、メインVoは浮遊感のあるエフェクトをかまされた男性声です。
いきなりの1曲目でこの電子音バリバリの曲だったので、ちょっと面食らいましたが、以降は“いつもの”サンホラなので安心………できるわけじゃないんですけどw

②名もなき女の詩
なんかパン作る曲。パン!パン!パン!言ってます。
目まぐるしい演劇的パートと、いったい何回パン!パン!言えば気が済むんだという執拗なパン攻撃(?)には辟易しますが、後半、清らかな女性Voが舞い降りてくる(誰が歌ってるか分からん)と共に、ドラマティックな美旋律パートが現れるから侮れないんだよなぁ。

③食物が連なる世界
たくさん食べようって曲。あと、イジメの曲。…と簡単にまとめちゃうのを躊躇うほど、歌詞が重い。
メインVoの南里侑香が、いかにも食が細そうな声で歌っており、歌詞と役柄にぴったりハマっています。個人的には、アルバム最初のハイライトかな。ピアノの響きが印象的な曲で、ゆっくり歩を進めるように美しいメロディがジワリジワリと沁み渡ってくるのが良いですね。多幸感溢れるメロウ・パートからサックスソロの流れが秀逸……なんだけどその流れを分断するように語りが入ってくるゥ!(怒)
あと、歌詞の読めなさではこの曲が一番。食物連鎖の図を載ってるんですけど、それを歌に変えて朗々と歌ってますから。

④言えなかった言の葉
せんせーい、お手紙が届いてマース!の曲。
前曲に続いてコレも、アイデア豊富なメロディを次々繋いで徐々に盛り上げてゆくアレンジが素晴らしいです。シンフォニーに包まれる様が◎。

⑤憎しみを花束に代えて
ふっきーの曲。
ふっきーがメインVoを務めています。最初の歌い出しでそっこー分かるもんな。特徴のある声だ。
メタルじゃありません。明るめのメロディを紡いでゆく長尺曲です。でも、「ふっきーらしい歌唱かどうか」にメタルか否かは関係ありませんし、彼女がメタルに特化したヴォーカリストとも思わないし、むしろバックグラウンドにHR/HMは薄い。
で、この曲での歌唱がふっきーらしいか、と問われれば、
(゚ω゚(。_。(゚ω゚(。_。(゚ω゚(。_。(゚ω゚(。_。(゚ω゚
と、首肯しまくるほかないのですよ。サビで音程がクイッと上がるところの歌唱なんて、実に“らしい”。
ラブリー、ドル箱を経て右肩上がりに向上してきたふっきーの歌唱。その表現力の幅広さを引き出している曲だと思いますね。同時に、明るい声から翳りのあるパートまで、囁き声から突き抜ける歌声まで、曲の求めている歌い手像として彼女が見事に応えていると言ってもよい。それくらい、曲にハマってる。「ちょっとこのメロディにこの歌詞は歌いにくそうだなぁ」と思う箇所もすんなりこなしてますし。そんな頼もしいパフォーマンスに、ウルウルきそうだよオジサン(笑)。
役柄としては、自分を見初めた男性にプロポーズされたものの、やっぱり「私...《同性(おんな)》が好きだ...」と思い直しちゃう百合キャラでして、全体的に嫌みのない朗らかなお姉さんっぽさが漂っていて、とっても◎です。素晴らしいです。サイコーです。好きです。 ←
そんなふっきーから「彼」を呼ばれる男性Voが妙に爺臭くムニャムニャしてるのが気に食わないですが、まぁ「《その初老の紳士(かれ)》」っていうんだから、しょうがないし役には合っているVoなのかもしれません。
2番の後の静かな独白調パートで、この“転生”が描かれますが、そこで「痛くしないで《お父様(パパ)》」というフレーズに持ってゆくまでの流れで、主人公の背景/過去の生い立ちを明らかにさせるくだりがすげえ。そして、それが、「憎しみを/苦しみを/哀しみを花束に変えて」ストーリーのクライマックスに繋がってくるのだから、なおさらすげぇ。そこでのふっき-の表現力もすげぇ。
曲としては、途中のプロレス実況風のマイク・パフォーマンス観たいのが邪魔極まりないですが、あとは概ね全編でふっきーの歌唱が楽しめますし、ツインVoになるところでは鳥肌モノ、最後(だけ)メタリックに疾走するところでは鼻血モノですふき。
ウチのブログ的には当然ながら、この曲がダントツ好き。傑作よ。

⑥西洋骨董□屋根裏堂
男性Voがチャラい曲。
私的聴き処は、やたらメタリックなGtソロの後に来る、目まぐるしい演劇パート。ここに四色猫姉妹、もとい、オレンジ猫ことふっきーが降臨しますからね。めっちゃ早口言葉気味な歌詞を猫役4人が順番に歌うパートで、ふっきー、「滑舌なら負けるが、歌の突き抜け度なら負けんぜ!」ってな具合の頑張りを見せてます。いや、実際、ハキハキした口調で見事に歌ってます。いやぁ、スリリング。別にライブじゃないから失敗したテイクは収められていないでしょうけど、上手くできるかなぁって何故か心配になっちゃうんだよなぁ。
やればできる子なんですよ、ウチのFukiは!

⑦涙では消せない焔
最もメタリックなナンバー。いや、前半にメタリックなパートのある曲というべきでしょうか。1曲丸々それでやってほしかったですが、戦場での戦いを表現するように、Gtを中心にした拮抗が楽しめます。乱舞するViolinを口火に、戦争モードへ突入しますが、なんか男性Voがすげーヘンな声の人だなぁ。中~終盤は、サンホラお得意の演劇&シンフォ・パートの積み重ねで尻上がり的に盛り上げますが、この声がどうにも受け付けないので、のめり込めず。

⑧愛という名の咎
急転直下、目まぐるしい展開の曲。サンホラは全体的にそういう曲が多いですけど、この曲はとりわけそんな感じ。かなり聴き応えあります。ミュージカル的な盛り上がり度ではここがアルバムのハイライトかな、と思います。
のっけから四色猫姉妹(色分けされてるけど黒猫四姉妹らしい)が登場、ふっきーが実に“らしい”シャウトをカマすもんだから興奮せざるを得ナイッ! 途中能天気なパートも入るし、メイン女性Voの歌い回しがぶりっ子っぽくてちょっと萎えるものの、6分台後半からのクライマックスで勢いと緊張感を増す曲調が素晴らしいですね。バックの矢継ぎ早に台詞を繰り出す演劇パートも、曲を激的&劇的に盛り上げています。
因みにこの曲のGtは、Leda。

⑨忘れな月夜
バラード調~ミュージカル的、時にロック色も強く…と、この曲もかなりアップダウンが激しいのですが、メイン女性Vo(Joelle?)の気品のある歌唱のおかげか、下品には感じられないところは良いですね。台詞のバックでシンフォ&メタリックに盛り上がるのはDragon Guardian的かも。

⑩輪∞廻
グルグルグルグルグルグルグルグル…………

⑪最果てのL
こんなダサい曲、久しぶりに聴いたよ。
初っ端の、やたら力と熱の入ったMC風宣言もダサけりゃ、クサヴィジュアル系な曲調もダセぇし、「ナインナインナイン!」とか歌うサビのダサさは空前絶後。しかもアルバム全体のシンフォ調でファンタジックな作風から、この曲だけ浮いてる。
IKUOがBa弾いてる? このダサさを前にしてはどうでもいいです(笑)


一枚のCDの収録時間いっぱいにみっしりと詰まった全11曲。聴いているとそれなりの疲労感を覚えますし、一気に通して流すこともあまりないのですが、門外漢である私が飽きずに聴けるのはそこここに耳を引くメロディがあるから。メロディ・センスに関しては感嘆させられる点が多いですね。私の好みに合うものも頻出するし。
ただそれでも、曲単位ではなくサンホラというユニット(?)自体にズブリとハマらないのは、聴いていて感動が醸造される暇が無いからですな。楽曲展開が目まぐるしい上に、あまり興味を持てない演劇パートが頻繁に挿入されるので、歌や演奏に好みのメロディが出てきて「これ!これ!」って思っててもスルリと躱されちゃうというか、すぐに気が逸らされちゃう。サンホラのステージは観たことありませんが、舞台上での役者(=ヴォーカリスト?)の演技と一緒ならば、音源だけで聴く時よりずっと楽しめるのかも、とも思ったりします。
同じ台詞パートでも、ドラガのそれはそんな風に思わないどころか、むしろ好きなんですけどね。多分あのパートは、台詞だけじゃなくてそれ以上にバックのシンフォ・パートが主張していて、耳がそちらをメインに追っているからかもしれません。その分、何喋ってんのかサッパリ聞き取れないことが多いのですが(苦笑)。一長一短ですな。
仮に、サンホラの全ての曲から演劇的パートを取り去ったら、私にとっては良曲佳曲だらけになっちまうかもしれません。でも同時に、それは既にサンホラではないのかもしれません(笑)。あとは、ちょっと滑稽や能天気に感じるメロディが出てくるのも、苦手かな。

ただ、こういう情報量が多く、長尺な楽曲を収めた作品がオリコン2位になって、ホール・クラスのコンサート会場がいっぱいになるほど受け入れられるってことは、とても面白いし、一音楽ファンとして歓迎したい気持ちですね。ファンの咀嚼力も凄けりゃ、それを作り上げちゃう方(=Revo+関係者)も凄い。
個人的には、上記苦手なポイントもあるのですが、クライマックスに向けて盛り上げてゆくアレンジの巧さと、所々に出て来る美味しいメロディ、そしてふっきーの歌唱のおかげもあって、本作はとても楽しめました。精緻に作られた、工芸品のような一枚だと思います。

つーか、「便宜上R.E.V.O.」って表記、なんなの?

【お気に入り】
⑤憎しみを花束に代えて
⑧愛という名の咎
③食物が連なる世界
④言えなかった言の葉


6/9。
ロックの日。
ふっきー、誕生日おめでとう。

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