Octaviagrace「RESONANT CINEMA」


Octaviagrace「RESONANT CINEMA」 (2015)

CV的SSC的びよん的ロマソ的なメロディック・メタル・バンドの、5曲入りデビュー・ミニアルバム。
バンド情報解禁の時に記事にしましたが、ここでもう一度メンバーを載せておきます。

Octaviagrace
実稀 (Vo/Roman so Words)
hanako (Gt/ex:Albion)
Youske (Ba/Scrambled Soul Circus、ex:CROSS VEIN)
Reanne (Key/Art Of Gradation)
Ko-ichi (Dr/ex:CROSS VEIN)


リリース元は、hanakoが在籍していたAlbionのアルバムと同じ、Walkure Records(と言ってもそのAlbionも先日解散してしまったわけですが…)。税抜1800円ってのは微妙に高いですね。5曲でこの値段は買うのを躊躇してしまうんじゃないかなぁ。Walkureはもうちっと努力してほしかったですね。まぁ「シングル3曲1500円」とかと変わらない感じではあるんですけど。


ジャケットが美しい。
歌詞カードの造りも美しい。
作品を映画に見立て、メンバーを「CAST」と、作詞を「scenarios」と表現する拘りも美しい。また、PhotographerとHair&Makeのクレジットがあるけど、どこにもアー写が無いのも侮れないポイント(笑)

メンバーの顔ぶれから思い描いていた通りの音が飛び出してきて、ニヤニヤしてしまいますね。バックの演奏は技巧的でカラフル、そこにアニソンへも踏み込むキャッチー&メロディックな歌が乗るというタイプ。要するに、オイラのめっちゃ好みのタイプですわん!
こういう音を前にすると、やはりLIGHT BRINGERの名前が思い浮かんでくるんですが、ラブリーからふっきーのVoを抜いてアニソン色を注入した感じもしますね。まぁラブリー自体も特に初期はアニソン色が強かったわけですが、実稀のVoが所謂突き抜けるタイプではないので、その点で印象はかなり異なります。逆に言えば、Roman so Wordsのバックをもっとテクニカルにした風とも言えますね。

そういったバンドとしてのイメージは統一されつつ、作曲者毎の色も出ているのが特徴。
Ko-ichiを除く4人が作曲しています(作詞は全て実稀)。Youskeが作った①Dramatic Quiet⑤ロストモラトリアムは爽やかな陽性メロスピ調、Reanne作の②茜は哀愁のハードポップ、hanako作の③Hardenbergiaは陰りのあるスピード・チューン、実稀の作った④ラストノスタルジアはViolinの音色が印象的な歌モノ、といった具合。ただどの曲も一口に「○○風」とは言いつつも、バックの演奏と曲展開が凝っていて一筋縄ではいかない為、それだけでは言葉足らずな面もあります。

演奏陣の自己主張はかなり激しいですね。自己主張の激しい性格のメンバーが揃っているということではなく(Ko-ichiなんて自ら前に出てくるって感じの人じゃないし)、楽曲の中に聴き処/聴かせ処を増やそうとした結果こうなった、という印象。
リズム隊はCROSS VEINの時以上にキメが多いし、特にYouskeのBaはその音量バランスと共にかなりのフィーチャー度合いです。他の楽器(の主張っぷり)との兼ね合いもあって、hanakoのGtは刻んでるだけでスリリングという特徴は抑えめ(そもそもメタリックなシュレッドは少ない作品だ)ながら、ソロ/オブリ共に「オォー、これこれ!」と快哉を叫びたくなるプレイが頻出します。Reanneは、一言で言うと…、巧いね。プレイ自体もそうだし、曲に合わせたムード演出のセンスが抜群。彼って、メンバーの中では最も音楽的な懐の深さがあるんじゃないかなぁ。
楽器陣が技巧的でキメキメなのに(良くも悪くも)殺伐とした空気が一切無いのは、Reanneによる雰囲気作りの巧さと実稀の声質に依るところが大きいはず。

で、実稀のヴォーカルだ。彼女の声って、全くもって“メタル”じゃないんですね。透明度が高く、ちょっと浮遊感があって、現実感覚をちょっと消す/ズラすような…。うん、ファンタジーの匂いがするよ。の歌詞はRPG(ロールプレイングゲーム)を基にしたものだそうですが(曲名を略すと“ドラクエ”になるというw)、Octaviagraceの音楽にはそういった良い意味での空想や虚構を感じます。
全て日本語詞による歌詞の美しさもまた、「ファンタジック」という印象を補強するもの。実稀の書く歌詞、フレーズ/表現には強く魅かれますね。私の感性にビビビッと響いてくる表現があちこちにある。の甘酸っぱさなんて異常事態ですよ(笑)。ロマソの時もこんな感じだったかなぁ? ただ同時に、ら抜き言葉やメロディへの歌詞の乗せ方に違和感を感じる所があるっちゃあるんですけどね。

そんな声質と歌詞だからして、歌唱が苦しそうなところが若干気になりますね。これは主に歌メロの高音域で気になる点。彼女って、ギリギリのパフォーマンスが良さを引き出すタイプではないでしょう。HR/HMでは、己の限界を突破せんばかりのパフォーマンスが、悲壮感に結びついて“吉”と出る場合があったりしますが(ストラトの小Timoとかね/笑)、彼女のVoの魅力ってそういうフィジカル面での強さとは違うところにあると思います。かつ、一瞬で聴き手の意識を持っていっちゃうストロング・タイプではなくて、じんわり染み入るような遅効性のVoだとも感じるので、望むのは今以上に実稀の声の透明感を生かす歌メロ作りへとシフトするか、彼女自身の進化を期待するか、といったところでしょうか。音域の広さや音程の甘さ、息継ぎの位置等、まだまだな部分は多いと感じるので、その声の持ち味を失わずに余裕を持って歌えるようになってほしいところですが。


強力なメロディを持つ楽曲が揃っていますが、個人的にはアタマ3曲がお気に入りかな。
①Dramatic Quiet
上記の通りの“ドラクエ”曲。オープニングとしても、バンドの名刺代わりとしても相応しい、吹っ切れた勢いを感じる曲ですね。ブインブイン暴れ回るBaのドライブ感がえらいこっちゃです。Gtソロ→Keyとのユニゾンへと繋がる間奏の充実は、これこそがAlbionに求めていたものと言い切ってしまいましょう。
「固く閉じた瞼を突き抜けて 差し込んだ白い光」「例えば不意に零れる笑みの隣にわたしはいたい、…なんて君は笑うかな?」あたりの歌詞から感じ取れる詩情が素晴らしく、歌メロもVoの良い所を上手く引き出してるんじゃないかなぁ。
②茜
音を詰め込むところと隙間を作るところのメリハリといい、テンポのコントロールといい、舞い落ちるキラキラKeyの使い方といい、Reanneの押し引きの巧さが光る曲。キメキメのパートから伸びやかなGtソロへと突入するところと、ラストサビで加速するアレンジはツボですね。
③Hardenbergia
「ハーデンベルギア」はマメ科の植物。紫色の花を咲かせるそうです。花言葉は【過去の愛・奇跡的な再会・広き心・思いやり】。曲を一篇の映画のように捉えると、ここで描かれているのは【過去の愛】なのか、はたまた【奇跡的な再会】なのか?「伸ばされた腕を今度は強く握るから」という歌詞をみるに、後者だと捉えたいところですね。「君が知らない表情で笑う度 取り戻せない空白に唇噛んだ」や、「諦めにも似たこんな気持ちでも今 確かに背中を押すならそれは強さだろう」というライン等、この曲の歌詞が一番好きですね。
曲調はズバリ「アルビオン meets ドラガ」。思わず、深き森で聖魔剣を掲げながら幻想の輪舞曲を踊っちゃうところでしたよ(笑)。シリアスで儚げな響きのあるブリッジでの声の響きが絶品ですね。逆にヴァースはかなり厳しい。間奏の展開とラスサビ裏のソロ&オブリに悶絶する、最長6分の曲。


人によっては、バックの演奏がゴチャゴチャし過ぎていると感じる音楽かもしれません。私は、ライブで演奏陣が奮闘している様子が思い浮かびますね。何回か(も)生で観ている人達だけに。実稀の実力は未知数ですが、ライブの出来は女性メンバー2人の踏ん張りに掛かっている気はします。

このバンドは、
演奏陣=しゃかりき。頑張る。
ヴォーカル=自然体。頑張らないw
(←頑張りを感じさせない、という意味で)
というバランスが面白いような。
その共存が今よりさらに上手く出来たら、キャラクターの違いが互いの良さを際立たせるような気がするし、よりメリハリが出てくると思うなぁ。

【お気に入り】
③Hardenbergia
①Dramatic Quiet
②茜

期待通りの、素晴らしく、美しい作品でした。
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