スティーヴン・キング『リーシーの物語』

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スティーヴン・キング『リーシーの物語』 (白石朗 訳、文春文庫、上・下)

スティーヴン・キングの『リーシーの物語』を読みました。

作家だった夫を亡くした痛手を抱えるリーシーは、ようやく遺品整理をはじめた。すると、夫が自分に遺したメッセージが見つかる。彼は何かを伝えようとしている。それは夫の創作の秘密、つらい時に彼が訪れた異世界“ブーヤ・ムーン”に関わるものだった…。人に降りかかる理不尽との戦いを巨匠が全力を注いで描く超大作。

花が咲き乱れる森“ブーヤ・ムーン”。その空に月がかかる時、世界は恐るべきものに一変する。まだら模様のものが這い回り、死者が佇む暗い森。そこへ赴こうとリーシーは決断する。夫が心に秘めてきた忌まわしい過去と直面し、彼を救うために。痛ましい宿命と、それに打ち克つ愛を描き、巨匠が自作のベストと断言する感動大作。


キングは私の一番好きな作家ですが、こいつは読み終わるのに時間が掛かりました。めちゃくちゃ掛かった。1ヶ月半くらいかな?


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
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なんで読むのに時間が掛かったかというと、まぁ読書のペース自体も落ちているんですが、それよりもこの作品、ひどく読みにくいんですね。いや、読みにくいという表現はちょっと違うかもな。文章自体は読みやすいんですけど、カットバックや回想シーンが頻繁に挿入されて、いつの(時期の)話が進行中かなのか判断に迷うのと、物語の構造が(少し)複雑なうえ、過去のキング作品に比べると現在進行形のスリリングさに乏しい為、ちょいダラけてしまうんですよね。気持ちがページからスッと離れてしまう。この「現在進行形のスリリングさに乏しい」ってのは、主人公に襲い掛かる“危機”それ自体が物語の主眼じゃないってことともイコールだったりします。

ワクワクするような楽しさや、カッコイイ!と快哉を叫ぶようなシーンは皆無。アッと驚くようなどんでん返しも、無い。この作品はね、どうにもこうにも切なく、哀しく、遣りきれない。読後にそういう想いが残る小説。とりわけ、過去の回想シーンのうち、スコットと兄ポールと父親スパーキーの“生活”を描いた場面には胸が詰まる。その行き着く行方にも。

哀しくて、同時に限りなく美しい作品でもある。愛する者への想いが赤裸々に描かれているから。それはスコットから兄への愛であり、父親への愛であり、妻リーシーへの愛でもある。そしてリーシーから夫スコットへの愛でもある。ラスト、読者は、<ブーヤ・ムーン>に残されたスコットの遺稿を読むリーシーと一体となり、物語に飲み込まれる。結末は分かっていた。分かっていたんだけど、それでも下巻464ページの「父から息子への手紙」にはヤラれる。
「忘れようにも忘れられない短い手紙」

エンタメ作品としてはつまんないけど、キングらしいと言えば、非常に「らしい」。今まで彼があまり書いたことのない切り口の作品にも関わらず。キングが好きな読者であれば、読んでいてのめり込むでしょう。で、のめり込むほどそれは辛く、かつ感慨深い体験になる気がする。

傑作。
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