Loszeal「Ideal World」


Loszeal「Ideal World」 (2015)

国産メロスピ/メロパワ・バンド、KNIGHTS OF ROUNDODINの本郷拓馬(=Caesar/Ba)、山田龍佐(=Ryusa/Gt)を中心にした、プログレメタル・バンドのデビュー作。ヴォーカリストは、舞台女優の蜂谷眞未。クォーターの美人さんですね。
バンドはこの3名編成ですが、アルバムにはオペラ歌手の竹林加寿子がコーラスで参加してます。

本郷・蜂谷共にソングライティングには関わっているようですが、音楽的な中心人物は、プログラミングやアレンジ、録音周りの作業まで手掛けた山田であると言ってしまってよい気がします。KNIGHTS OF ROUNDが出している音からはちょっと想像できない音楽性。あちらのブレーンはYAZIN(Gt)であり、そこで収まらない/発揮できない山田の趣味・嗜好・才能がLoszealに注ぎ込まれているということでしょうか…? KORでの被り物を取り去ったら、封印されていたモノが解き放たれた的な…(笑)
本郷の「ある意味10年がかりくらいのアルバム」という言葉通り、曲のアイデアとしてはかなり古いものもあるようです。

想像力を刺激するファンタジックなジャケットにまず魅かれますね。
大体において管理人は買う前の試聴/視聴ってほとんどしないタチな為、本作購入についてもレーベル側・バンド側が用意した諸々の写真や宣伝文句(“プログレメタル”であることと、具体的ないくつかのバンド名も)を判断材料にしているわけです。その中でもこのジャケの占める割合は大きかったですね。「こういうジャケの中身が悪いわけないやん」という思い込みという名の、結構当てに出来る判断基準であります。

で、その予想は当たる。
素晴らしい作品ですわ。
ロマンティックで、幻想的で、猥雑で、芳醇で、濃密。攻撃的なんだけどマシーナリーじゃなくって、人の温もりを感じるプログレメタル/プログレッシヴ・ロック。
ただ、“プログレ”という一単語で括りつつも、その実とてもカラフルで、多ジャンルに跨った音楽ですね。よく練られた楽曲展開の中で色んな要素が次々と顔を見せるので、玩具箱的な面白さがある。
(私の捉えるところの)プログレメタルとプログレッシヴ・ロックって感触の違いが明らかにあって、個人的にはかなり異なるジャンルとして捉えているんですが、Loszealの音楽はその2つをうま~く繋げているようにも感じますね。それは、過去と現在を繋いでいる感覚でもあり、古今の音楽からオイシイ部分を掬い上げてきて纏めたようにも思えるところ。

ドラマーのクレジットが無いので、リズムはドラム・マシンなのでしょうか。違和感は感じませんが、それより、この複雑なパターンや変拍子を全部打ち込んだのか!?と驚かされます。Drに関してはMike Portnoyを意識したような音色とパターンですが、全体的な音楽性はDREAM THEATERっぽくない。もっとヨーロピアンな感性の下に生み出された楽曲群であるように感じます。
山田の活躍っぷりは、ギタリストというよりコンポーザーの側面を強調したい気持ち。事実、KeyがGtより目立ってる(これも手弾きじゃなくって、打ち込みか!?)し、楽曲の中で重要な働きをしていると感じます。

初期GENESIS~初期MARILLIONIT BITESPENDRAGONあたりの英国系譜の音をもっとダークでメタリックにした感触もありますが、それだけじゃなくて、このバンド独自の個性を付加しているのが蜂谷のヴォーカル。
様々な声/歌い方を使い分けるところや、突き抜けるような声量を感じさせるところが、歌っているというより演劇を見てる(聴いてる)、そんな気にさせてくれます。彼女の「舞台女優」という職業(肩書)が、判断する上でのバイアスになっている可能性も大ですが、正に演技してるような歌い方ではありますね。
その独特の歌い回しは、気品や意志の強さを感じさせる一方で、時に素っ頓狂で猥雑な響きも持っており、アンダーグラウンドな瘴気や見世物小屋的なグロテスクさが溢れ出してくることもしばしば。なんとなく前時代的な…、もっと言うと、淫靡な江戸川乱歩的空気が嗅ぎ取れる気がする。彼女のVoが和と洋を折衷、というか入り混じらせているような。
クセはありますけど、彼女の声は私にとって“アタリ”でしたね。試聴しないで唯一心配だったのはVoに対する(自分の嗜好との)相性のみでしたし、アタリどころか大当たり、最大の収穫かな。ライブでどうなるのか、観てみたい。

歌詞における難解かつ時代掛かった独特な言葉選びも、このバンドの個性であり、それが上に色々書き連ねた特徴を強めていることも見逃せないポイント。ゆえに、(唯一英語詞の)タイトル・トラックも日本語詞で統一してほしかったところですね。作詞に関しては、クレジットを見る限り、本郷のインプットが大きいよう。


8分弱と11分弱、2曲の大作を含む、全7曲を収録したアルバム。
序曲的な①Invitationに続く②懶惰、断絶が、いきなり「Loszeal全部入り」な作風の大作。この曲が一番クセがあって演劇的かもしれません。この曲がイケるなら他の曲全部イケるような気がしますし、私は一発でこの魔術的で異形な曲を気に入りました。歌唱、演奏共に幅広い表現力を見せつける、力作。⑤天長地久も同様に、彼らのぶっ飛びっぷりが網羅されたハード・チューンですね。

アルバム随一の突進力と疾走感に満ちた③Repeat Itselfはストレートなパワーメタルですが、蜂谷の突き抜けるVoとテクニカルなキメキメの間奏が強力。
⑥Freak Outsiderもスピード感に満ちた曲ですが、こちらは徐々に速度を上げてゆく構成がスリリングですね。特に中間の間奏部以降、縦横無尽に駆け巡るKeyが生み出す手に汗握る聴き応えは、アルバムで一番好きなところかも。曲名もカッチョイイしな。

いやぁ~、蜂谷、実力・個性共に備えた逸材ですわ。ジャズの領域まで踏み込む④Adaptation : uoitatdapVでは実に優しい響きの声、最長の⑦Ideal WorldではKate Bushのようなスキャット気味の歌唱やJanis Joplinっぽい響きのパートもあったりするんだから油断ならない。


驚かされました。
聴き処がサビメロだけに集中してないから、繰り返し聴いてても飽きないし、面白い。
傑作。

【お気に入り】
⑥Freak Outsider
⑤天長地久
③Repeat Itself
②懶惰、断絶
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