Lilith Abi「The Return of Pink Elephant」


Lilith Abi「The Return of Pink Elephant」  (2015)


A long time ago in a galaxy far,
far away . . . .
遠い昔、はるか彼方の銀河系で....




Episode IV
RETURN OF PINK ELEPHANT

エピソードIV : 桃色象の帰還



“nap, nap… nap, nap…”

辺境の惑星FUKUHARAから届いた謎の電文。

銀河系屈指の知性派集団「チームPENTAGON」の

解析した結果が共和国に激震を走らせる。

「キリンさんが好きです。でも、ゾウさんのほうがもっと好きです」

フォースのバランスが崩れつつあることを察知した

共和国最高議長KOJIMAは、調査の為に

解放と救済の守護者である

ジェダイの騎士KAORUを派遣したのであった……




『スター・ウォーズ』シリ-ズのオープニング風の冒頭は、本作の内容とはまったく関係がございません(当たり前だ)。
Crossover popsバンドこと、Lilith Abi (リリス・アバイ)、2012年にリリースした1stアルバム「Seeing Pink Elephants」の再録アルバムになります。通算4作目。オリジナル1stは既に入手困難になっており、私も持ってましぇぇん。

ということで、元の1stに収録されていた7曲を全てリメイクし、そこに新曲1曲を追加しての“帰還”です。かつ、①prologue⑪epilogue⑥interludeというインストゥルメンタル3曲も追加、各曲のイメージを連結しアルバムに統一感を出すのは、これまでのリリスの作品と同様の手法。
因みに、今までのリリース物は全てCD-Rで、本作で初めてプレスCDになっています。

このバンドの基本的な音楽性については、3rd「hiatus」(2013)の記事を参照していただくとして、で、本作。
オリジナル1stはプログレ色が強いという評判だったのですが、この再録は思ってたよりジャズ/フュージョン色が強めに仕上がっていますね。特にアルバム前半。そして、後半はややポップス/ロック色が強めになってくるのが、アルバムの大きな流れかな、と。
全体的には(直近の作品である)「hiatus」の延長線上にある雰囲気かな、と思います。大人で、成熟した感じ。でもカラフルで、遊び心を忘れてない。そんな佇まい。

序曲に導かれて、聴き応えのある②美しい孤独③Seeing Pink Elephantsで幕開け。とりわけこの2曲のランニング・タイムが長いわけではありませんが、ジャズ/プログレ/サイケ…様々な要素が入り混じりあいながらリリス以外の何者でもない音楽へと昇華している様子と、ダイナミックに展開してゆく曲構成で一気にアルバムの雰囲気を決定づけるところが存在感たっぷりです。
バンドの代表曲であるは、静かな出だしから徐々に昂揚感が高まってゆく曲で、大々的にフィーチャーされたSax&Trumpetと駆け抜けるピアノが印象的。初めて(ライブで)聴いた時、細かい譜割りで弾むように歌う、スキャットっぽいけどスキャットじゃないサビメロがとても新鮮に響きました。よくテレビとかで花が開花する様子を早回しにした動画があるじゃないですか?個人的には、アレに似た一瞬に凝縮された美と生命の躍動感を感じる曲でもあります。
アルコールや麻薬等による酩酊/幻覚症状を意味する表現を曲名にした③Seeing Pink Elephantsは、その名の通り、スペーシーなシンセが幻惑する浮遊感たっぷりの曲。気だるげな薫のVoがポップな感触も有しているためコロッと騙されますが、実は歌詞が怖い。終盤、福原nap雄太の何拍子だかさっぱり分からないDrが曲をグングン加速させて盛り上げているのがスリリングですね。スピード・コントロールの巧さが光ってます。
続く④Can Waitも前曲のムードを引き継ぐ曲。

リリスは4人編成のバンドというクレジットにはなっていますが、その実、音源制作にせよライブにせよ、(曲のテイストに合わせて)その都度参加メンバーが入れ代わり立ち代わり、という柔軟な形態になっているようです。ロック・バンドではあまりないことかもしれませんが、ジャズ/フュージョンだとバンドリーダーがパート毎にメンバーを集めて、ってのは珍しくない活動形態ですね。その意味でリリスは、こじまりょうすけ(Ba)と薫を核とする自由な音楽集団とも言えるわけで。
リリスの多くの楽曲を書いているのはこじまですが、外部ライターが書いた曲も存在し、ライブでも披露されています。本作にも枚田俊輔が書いた曲が2曲あります。⑤枯れない花⑧夜明けがそれですが、双方、Voを活かしたお洒落なポップスで心地よいです。後者の、高音部Voの透き通った響きがとても好き。
しかし、薫のVoはどの音域でも自然で、技巧的に不安定なところがまったく見当たらないのがすげー。聴き手が曲の世界に没入するのを阻害しない声というか。ただ、曲やパートによってクセのある歌い回しをするため、同時に個性はかなり色濃くもあるという。その声/歌唱法の使い分けによって、場面転換がより鮮やかになっている瞬間をそこここで感じます。

個人的リリス最強楽曲が、新曲の⑦theta。アルバムの核となる楽曲であり、同時に異形で異質な曲でもある。
曲構成としてはシンプルで、バラード調のメランコリーなパートのド真ん中に、ジャジーでプログレメタル的な変態技巧的鬼畜パートが居座っているというか、後者を前者がサンドイッチしているというか、まぁそんな曲です。B'zCalling的に、「これ、まるっきり別の曲だろ」って言いたくなる2曲が同居している感じ。なので、曲調の落差が、そして感情の振れ幅が最も大きい楽曲ではないかな、と思います。
そのどちらのパートも私の琴線をベタベタ触れてキまくりやがるんで、こりゃキラー・チューンなわけでして。
古いオルゴールから聞こえて来るような、どこか懐かしくも退廃的なイントロ。その後、入って来るテーマメロのメランコリーっぷりにいきなりヤラれます。こりゃ北欧だよ。スカンディナヴィアンな哀愁ですよ(笑)。ヴァースは、重心低めの演奏をバックにVoが気怠い色気を湛え、、、、そしてサビでハッとさせられるこの鮮やかさ。この「ただ裏が表に 表が裏に~」というサビ・フレーズが、メロディといい声の響きといい絶品極まりなく、もう
「シータッ!」
「パズー!」

と、シャウトせざるを得ません(意味不明)。
2分台後半からの中間部がまた凄い。インパクトという点ではバラード・パートの比ではありませんし、正に度胆を抜く強烈さ。
MAGMAを思わせる、反復するBaのうねりから鍵盤が鮮やかに駆け抜け、薫の歌唱が舞い上がる。
吼える。
文字通り、吼える。
シャウトする。
獣性を開放するかのように。

バックグラウンドにHR/HMが存在し、様々なメタル系ヴォーカリストの歌唱を幅広く研究した薫の本領発揮というべきパートでしょうか。
びっくらこいてる暇も無く、そのシャウトに口火にして演奏陣の怒涛の応酬が始まります。ゲスト・高本純の軋みを上げるViolinがKeyとDrと真っ向からぶつかり合う様子はアレだ。THE MAHAVISHNU ORCHESTRAだ。マジで。メカニカルで、メタリックでさえある。
4:20、時間を一気に巻き戻すように再びサビへ。2回繰り返し(歌詞は異なるが)た後、テーマメロに回帰して締める、6分20秒。名曲。

一際ポップなメロディが突き抜ける⑨Partner(Saxソロの鮮やかさ!)、「hiatus」収録ヴァージョンとはかなり印象の異なる⑩あなたは誰のものでもなく (remix)で軽やかにアルバムを締めくくる終盤。は、打ち込み主体のバックのスピード感(テンポ的に走っているわけではない)&無機質な感じが、歌メロのポップ感と意外に合っており、そこにそよ風を思わせるメロディが乗る組み合わせが面白いですね。


オリジナル1stは未聴ながら、アルバム構成としては⑥interlude⑦thetaのパワーが半強制的に意識をクリアにする為、自然と前半・後半分けて捉えられます。すっきり。3rd「hiatus」は14曲ぎっしりと色んな曲が入ってましたが、本作のように正味8曲くらいのほうが各曲のキャラ立ちが良くなると思いますね。
買って以来⑦thetaはやたら繰り返し聴いてますし、今後一枚のアルバムとしても時折引っ張り出しては聴くという、長々と愛する作品になりそう。

【お気に入り】
⑦theta
②美しい孤独
③Seeing Pink Elephants
⑧夜明け


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