Lilith Abi「hiatus」


Lilith Abi「hiatus」 (2013)

Crossover popsバンドこと、Lilith Abi (リリス・アバイ)の3rdアルバム。私が初めて聴いた彼らの作品でもありますし、今まで数回観たライブの選曲も本作収録曲が多かったです。
バンドのオフィシャルHPは → コチラ。

バンド編成はVo+Ba+Dr+Keyの正式メンバーに加え、(スタジオ&ライブ)サポートでSax・Trumpet・Gt等が入ります。今までに観た3本のライブのレポ(コレコレコレ)で、語彙が無いなりに、かつ表現力が無いなりに色々書き綴ってきましたが、私が今まで聴いてきた音楽の範疇ではあまり語ることのできない音楽性ではあります。いや、ただ私が語る言葉を持っていないだけかも。
パーツパーツに着目すると、ロックで、ポップスで、ジャズで、プログレで、サイケで…etc…というわけで、要は「クロスオーヴァー」っすよ(笑) ←説明放棄気味w
雑食。
玩具箱。
ごちゃ混ぜ。
色んな音楽の見本市。

「Crossover」というキーワードから、ウチのブログで今まで扱ってきたアーティストの中で言うと、管理人的にはMAHATMAの名前が浮かぶんですが、MAHATMAからHR/HM色を大幅に取り去って、変わりにジャズ/フュージョン色を注入したようにも感じますね。様々な音楽が交錯しているということ以外にも、共通点としては、女性Voだということ、高度な演奏技術を持っていること等ありますが、重要なのは「歌モノに収斂すること」、コレでしょう。だから、色んな要素が盛り沢山ながら、とっちらかることなくまとまっている。

制約から解き放たれて自由に羽根を広げている音楽性に魅かれる。
演奏もアレンジも自由自在。
ヴォーカルも自由自在。

特に歌唱については、(MAHATMAより)Lilith Abiの方が自在で、縛られていない感じを受けますね。超個性的な節回しの薫(Vo)の歌唱は、ライブレポでも譬えたように猫のようなしなやかさと奔放さをもって、楽曲の最終的なイメージを決定づける。彼女が歌うメロディ・ラインは、歌詞と歌メロとリズムが一体化しているように響いて、繊細さと図太さ、清濁を自由に切り替えて、シームレスに行き来する。「清濁」ってのは勿論クリーンVo/デスVoってことじゃなくて、声に含む不純物の濃度というか、どれくらい毒気を感じるかって意味ですけどね。
彼女の歌唱、どんな歌メロでも、咀嚼して自分のモノにしてるような表現力を感じるんだよなぁ。(パートによって)日本語であって日本語でないように響く節回し(これが猫っぽいんだ)は、リリスの個性でありながら同時に強いクセでもあるので、受け付けない人もいるかもしれないですけどね。……いや、「クセがある」というより、「クセを出している」と言った方が正確ですかね。真っ直ぐ素直な感じにも歌える人ですので。
そういう、薫のVoが楽曲を束ねていることもあり、先述の「色んな要素が盛り沢山ながら、とっちらかることなくまとまっている」という印象に帰結するわけです。

リリスのほとんどの作曲を手掛けるのはリーダーである、こじまりょうすけ(歌詞は、基本全て薫)。ベース担当ということになっていますが、どうやら何でも出来ちゃうマルチ・プレイヤーのようでして、担当楽器のクレジットに関わらず、CDに収まっている音に関して彼がプレイしている範囲はとても広いようです。音源制作の中心は、こじま&薫の2人っぽいですね。
こじまは、エンジニア的なところからプロデュースまで一手に引き受けており、彼の音作りはクリアで生々しくて好き。楽器と歌の表情が上手く伝わってくる録音。十中八九、機材マニアとみた(笑)

こういう、色んな要素が顔を出す音楽をセンス良くまとめるには、作り手としてそれなりの知識と素養と表現力が要求されるのでしょうが、私は楽器も出来ない単なるリスナーであるし、聴き手の方はそんな難しいことは考えずに楽しめばいいわけですが、リリスの音楽は正にそれができるんだなぁ。なんだろ、“プログレしてる”部分はあるんだけど、それ特有の小難しさみたいのは無いのよね。
BGMとして流しっぱなしにしておいてもいいし、個々の楽器やパートに集中しても聴いても面白い。共通するのは、「心地良さ」でしょうか。どんなシーンにも合う、日常に寄り添う感覚。

スマートに切り込んでくるKey
楽曲展開の起点となるBa
躍動感をコントロールするDr
時にリズム時にメロディと、活躍するGt
テーマメロを受け持つほど存在感の大きいSax
それらの上で躍動するVo

場面展開の鮮やかさが印象に残る音楽ですね。そして、現実と幻想のあわいを曖昧にするような浮遊感や、異国情緒を感じる(例えばそれは、薫が好んで聴いているというフレンチポップスだったりする)のも特徴。


…とリリスの基本的な音楽性を私なりに俯瞰してみたところで、本作。
クレジットを見る限り、このアルバムに関しては(こじま以外の)他のメンバーや外部のライターが書いた曲がやや多めかな。今までの3枚のCDを聴いて、といってもオリジナル1stは入手できないので、その再録盤を聴いた上での話ですが、それぞれ色合いが違う中、この3rdが最もジャズ/フュージョン色の強い1枚と言えそうです。①prologue⑦interlude⑭epilogueを配置した全14曲。
⑥Fighting Rodentsの歌詞に「桃色の象が 踊り狂う街に 自らすすんでダイブしてやろう」という一文があるように、曲によっては位相をずらすというか、退廃的で現実感を少し麻痺させるような響きがあるのも特徴で、サイケ方面に踏み込むことを躊躇しない印象も有り。因みに、「ピンクの象が見える」とは、アルコールや麻薬等による酩酊/幻覚症状の暗喩であり、(その英語表現である)"Seeing pink elephants"はリリスの1stアルバムのタイトルでもありますね。

特に本作は、「日常に寄り添う感覚」は強め。ポップで可愛げのあるメロディの③春の眠り(ピアノの瑞々しい響き!)、Saxが都会的な情景を描き出す④あなたは誰のものでもなく(1st収録曲の再録、歌詞がいいね)、明るく弾む⑩GOODBYE SUNDAYあたりはそれを強く感じる楽曲。所謂、BGM的に流しておいても心地よい音楽ですね。⑨ハイエイタス⑫ベルガマスク⑬サマリーでの優しい響きのVoも、しかり。
でも、も途中スペーシーになったりして、まったく油断できなかったりもするんですけど(笑)

一方、⑤アスファルトの上⑧Roleplaying⑪immortalは、ズブズブと曲の世界観に沈み込んで聴き入るタイプかな。不安定(不安)の後に訪れる安定(安らぎ)、混沌の後に訪れる秩序が気持ちいい。
はライブでも要所に演奏される曲で、このアルバムの中ではハードテイストのジャズ・ナンバー。色気と気だるさのあるVoが、曲進行に従って攻撃力を増してゆく。それに呼応するように、Sax&Key&Drが丁々発止とやり合う終盤の展開がスリリングですね。
今回何回も聴きなおしてたら一番のお気に入りになったは、複雑に重なり合うメロディが美しい曲。プログレ色が強めで、後半、徐々に躍動感を増してゆくところが堪らないですね。Drが大活躍している曲でもあります。


3枚(2nd、3rd、1st再録)はどれも違う良さがあるんですが、本作が一番色々な要素が入ってる作品に感じますし、私が最初に聴いた作品だったということもあり、まず紹介しました。
実は、コレもいいけど他の2枚の方がもっと好き(笑)

【お気に入り】
⑪immortal
⑤アスファルトの上
③春の眠り
④あなたは誰のものでもなく
⑧Roleplaying


ネックは、CD入手方法がライブ会場で直接買うしかないってことか。
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