ORPHANED LAND「UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS」


ORPHANED LAND「UNSUNG PROPHETS & DEAD MESSIAHS」 (2018)

イスラエル産プログレッシヴ・メタル・バンド、ORPHANED LANDの6thアルバム。
前作「ALL IS ONE」(2013)リリース後、来日公演を前に中心人物であったYossi Sassi(Gt)が脱退。後任のIdan Amsalem(Gt)の加入後としては、初めてのオリジナル・アルバムです。

前作同様、数えられないほどのゲスト・ミュージシャンがクワイヤやナレーションやよく分からん楽器で参加しています。それらゲスト陣の参加に食われないで、しっかりとバンド自身の色が出ているのが彼らの良いところ。ゲストはあくまで彩りなんです。
とはいえその彩りがめっちゃ効果的に働いていることも事実なので、バンドのアレンジ・センスの非凡さに毎回驚かされるんですよね。

ブレない個性 is 強し。
本作でも、彼らにしか成し得ないオリエンタル・メタルが展開されています。今までに傑作しか出してないような気もしますけど、本作もまた傑作。このバンドの場合、リリース・ペースがそれほど早くもないので、作品毎の作風が似ているとしてもマンネリ化はしませんしね。

前作同様、1曲1曲がコンパクトに仕上がっているように感じます。9分、8分、6分台の曲がそれぞれ1曲ずつあり、ふつーの感覚だと「コンパクト」とはとても言えないんでしょうけど、全体の流れがスムーズなため聴いてるとあっという間。オケ/女性Vo/アコギ/ナレーション…etc…と、手を変え品を変えフックを提供してくる異様な曲作りの巧さが今作でもスゲー。各要素のバランスの良さが光る作品になってます。なんちゅー高レベルの洗練、そして独自性か。
Steve Hackett(Gt)が客演する壮大な叙事詩のような大作⑥Chains Fall To Gravityから、Hansi Kursch(Vo/BLIND GUARDIAN)の雄々しいVoが突き抜ける⑦Like Orpheusへの流れが白眉ですね。

Yossi不在の物足りなさを感じさせない、ギター・チームの踏ん張りも嬉しいところ。オーファンドランド全部入りなオープニング、①The Caveからしてリフ&ソロともに主張してます。④All Knowing Eyeでの歌うような泣きギターもたまらん。IdanかChen Balbus(Gt)か、どっちがリード担当か分からないですけど(2人ともか)、頑張ってます。

ポジティヴな色合いが濃かった前作と比べると、アグレッションが少し戻ってきてますかね。Kobi Farhi(Vo)がグロゥルを用いる場面も少し増えたかな。激しめの曲の中では、今後バンドの代表曲になってゆきそうな②We Do Not ResistAT THE GATES他のTomas Lindberg(Vo)が客演する⑫Only The Dead Have Seen The End Of The Warの2曲の存在感は強いです。後者のラストはなかなか衝撃的ですね。オケがガンガン盛り上げた後に続く、抜刀と人が倒れ込む音。静寂。そして、終曲⑬The Manifest - Epilogueにゆったりと流れてゆくエンディングが見事です。
また、メッセージはいつも以上に力強く怒りに満ちたものなんでしょうか、歌詞が伏字になっている(している)箇所もあります(音源ではピー音が被せられている)。

そしてバンドの顔たる、KobiのVoの神々しさよ。
清濁両方でずば抜けた表現力を示し、つまんない曲でも彼が歌えば名曲と化す。そんな風に言い切ってしまいたい素敵ヴォイスをお持ちの人が、つまんなくないどころか、フック特盛のラインを歌ってるんだからこれ最強でしょ。


似ているバンドがねぇ。
強いて言えば、コラボしたこともある同じイスラエルのAMASEFFERなんでしょうけど、あちらはVoが固定していないので、プロジェクトっぽいところがありますし。
唯一無二のバンドが彼らにしかできないことをぶつけてきた傑作。でも、繰り返しになりますけど、本作だけがそのキャリアの中で図抜けているわけじゃない。彼らはずっと継続している。訴え続けてる。ORPHANED LANDのその存在自体が奇蹟に感じるよ。
本作「も」また、素晴らしい作品です。

【お気に入り】
⑦Like Orpheus MVは → コチラ。
⑥Chains Fall To Gravity
①The Cave
②We Do Not Resist
④All Knowing Eye
⑪Take My Hand
⑫Only The Dead Have Seen The End Of The War


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GAMMA RAY「POWER PLANT」


GAMMA RAY「POWER PLANT」 (1999)

メンバー・チェンジを経たGAMMA RAYが、名盤「Somewhere Out In Space」(1997)に次いで送り出した6thアルバム。これまた名盤。そして、ウチのブログとしては、本作こそがバンドの最高傑作です。

なんという貫録と安定感なのか。
勢いに満ちた前作よりもカラフルな色合いが強いです。一点突破型ではなく、全方位的に強いというか。当時の充実したバンドの状況がそのまま出来栄えに直結している気がします。
ヘヴィな⑥Short As Hell、アルバムの中にしっかり馴染んでいるPet Shop Boysのカヴァー⑦It's A Sin、マッチョじゃないのに筋肉を誇示しようとしているMANOWARのような⑧Heavy Metal Universe、Dirk Schlachter(Ba)らしいピースフルでオペラ調の⑩Hand Of Fateといった楽曲群が幅広さを設定し、お得意のメロパワ曲でとどめを刺す。そんな“勝利の方程式”が完璧に働いているんじゃなかろうか。

前作の記事でHenjo Richter(Gt&Key)の作曲能力の高さについて触れたところですが、ここでその才能は爆発。③Send Me A Sign⑨Wings Of Destinyという、2つの名曲を産み出すに至っています。本作を初めて聴いた時に「ほれ見たことかッ!? 俺が言ってただろう、Henjo Richterは天才だって!!」と叫んで回りたい気分に駆られたことを思い出します(笑)。
前者は今やライブの最後に演奏される、バンド史上最も重要な曲になっていますし、後者こそがGAMMA RAY最強楽曲だと固く信じてますよオイラは。Kai Hansen(Vo&Gt)のお株を奪うような“団結&より良い世界を追い求める”系のメロパワ大作であるは、二段構えのサビメロ、勇壮なクワイヤ、間奏の構築美、疾走しつつも一本調子にならない演奏の機微、歌詞の言葉選び等々…と、マジで隙がねぇ。歌詞のテーマと聴き応えのあるGtワークは、HELLOWEENHow Many TearsMidnight Sunに通じるものがありますわね。つまりサイコー。泣ける。

もちろん、主役であるKaiのソング・ライティングも冴えまくってる。特に9分に迫らんかとする⑪Armageddonの完成度は白眉で、彼が書いた大作の中では随一ではないですかね。
また、Dan Zimmermann(Dr)が曲作りに関わるようになり、クッサクサな展開を重ねまくる④Strangers In The Night、ポップで爽やかな歌メロを持つ⑤Gardens Of The Sinnerという佳曲を提供していることにも驚かされました。


とにかく楽曲粒揃いです。
ブックレットの何を狙っているんだか分からないメンバーの写真以外は、全てが素晴らしい。
あ、ジャケ画も十二分にダセぇかw

【お気に入り】
⑨Wings Of Destiny
③Send Me A Sign
⑪Armageddon
①Anywhere In The Galaxy
④Strangers In The Night
②Razorblade Sigh
⑧Heavy Metal Universe
⑤Gardens Of The Sinner


ちょこっと感想 2017年 vol.3

【ちょこっと感想 2017年 vol.3】

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ALDIOUS「We Are」

なんと2017年2枚目のアルバムである。「ミニ」といいつつも9曲入ってるので、こりゃあフルアルバムみたいなもんでしょう。すごいペースだ。
前作「Unlimited Diffusion」でも感じたJ-POP化が一気に進行してますね。後半は歌謡曲的ですらある。かなり厳しい出来。メタリックじゃないから厳しいということじゃなくて、この方向性・この振り切れ方だと、バンドの拙さが目立ってしまうから。ストレートなYoshi曲よりトキ曲の方がRe:NOのVoには合ってると思ってますけど、ここまでJ-POPしちゃうと歌唱力・表現力の限界を露呈しちゃうというか。あと、この曲調にしてはDrが過度にバタついていて、邪魔に感じる場面もアリ。
Marina作の⑨TravelersがSHINE期のLUNA SEAのようだ。



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AT THE DRIVE-IN「in・ter a・li・a」

17年ぶりの4thアルバム。Cedric Bixler(Vo)とOmar Rodríguez(Gt)が結成した変態雑食プログレッシヴ・ロック・バンド=THE MARS VOLTAは好んでCDを集めていましたが、その“前身”であるこちらは本作で初めて聴きます。なんとなく自分とは合わない音だと思い込んでいたのよね。
…ですが、かっけぇー!!
なんだこの瞬発力と熱さは。めっちゃ技巧的な音ではあるけど、HR/HM整合感とは別モノだし、テクが鼻につかないし、なんか衝動的。パンクっぽいエネルギーがあるけど同時にやたらインテリジェンスも感じる。これぞ!というキメ曲があったらもっと良かったです。細かいGtワークが映えるTorrentially Cutshawは結構好きだけども。



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Innocent Material「everlasting rain」

CROSS VEINのMASUMI(Gt)が曲を書き、DRAGON EYESDragon GuardianのManami(Vo、元Rakshasaでもある)が歌うユニット、Innocent Materialの1stシングル。3曲とそのインスト版を収録。
録音メンバーとして、Baに元GALNERYUSのTsui、元21g/サポート色々のAct.が参加するというHR/HM色強めな布陣ですが、音楽性は陰陽座をアニソン寄りにした感じでそれほどメタリックではない。そもそも音作りが打ち込みメインで、MASUMIのGtもソロの時くらいしか前面に出てこないので、バンドっぽさが感じられない勿体ない録音だなぁと。あと載ってる歌詞が間違っているのはいただけない。
Manamiの歌は、スムーズさに欠け歌詞の区切れ目もおかしいところがあるけど、しっとり大人っぽさ重視でなかなか好みなんだよな…、とか思ってたら、③My Little Starsでいきなり大好きダーリン系の甘々Voが飛び出してきて萎えた。これぞ同人音楽の怖いところである(笑)。
ライブは素晴らしかった(→コチラ)ので、2018年夏に出るという1stアルバムは楽しみにしています。



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VELVET★CHERRY「Arise」

国産女性Vo・ZIGGYタイプHRバンドのミニアルバム。髪の色が「赤+黄+青」と信号のようだ。
幅を広げてきましたね。じっくり練り上げる①Sepiaで始まるのがまず異色だし、ヘヴィな②Parrot、カッティングが印象的な哀メロ・ロック③Rainと続く。しっかり歌い上げるAkane(Vo)のハキハキ歌唱を中心に据えているのは不変ながら、スピードに頼らない聞かせ方やR&Rの軽快さとは異なる面をアピールするような作風です。それでいて、VCらしい⑤Dazzleでまとめ上げるんだから巧い。ノセるところと聞かせるところのバランスがめっちゃ良好です。
ただ、曲の幅が広がったことで逆に、どの曲でも同じ印象を与える歌声が物足りなく感じる羽目に…。。AkaneのVoは健全過ぎるんですよね。曲によってはもっと猥雑さを感じさせてほしかったりも。




PANDORA「Be The One」 (2018)

小室哲哉と浅倉大介によるユニット、PANDORAのシングル。
Beverlyが歌う①Be The OneKAMEN RIDER GIRLS(仮面ライダーGIRLS)が歌う②proud of youという、仮面ライダー絡みの2曲を収録してます。パッケージされたCDとしては、「A面曲」であるがタイトルになってますけど、ウチのブログとしては当然のようにKRGS推しですので、記事のタイトルとしてはこのようになります。というか、しました。


①Be The One feat. Beverly
一発で覚えちゃうくらいキャッチーなメロディを持つ、ポップに弾けるA面曲らしいA面曲。
accessは好きで聴いていましたけど、T.M.Revolutionはまともに聞いてない。ということで、「浅倉大介らしさ」がどんなものかはイマイチ自分の中でも理解できてるとは言えませんが、「小室哲哉らしい」かどうかなら判断できます。もちろん自分なりの基準ではありますが。
めっちゃ小室曲ですコレ。えげつないほどの連続ハイトーンを要求する歌メロ・ラインなんてもろに。そしてその狙いに見事に応えるBeverlyの非凡さが光っていますね。正に逸材。音域的にハイが出るだけでもすげー、ヤケクソになってもいいくらい高い歌唱レベルが求められる曲にも関わらず、彼女はやすやすとこなしてるように聞こえますし、ヤケクソどころか親しみやすさや溌剌さ、キュートさを感じさせるんだからすげー。Ariana Grandeをパク…、意識しまくったヴィジュアル・イメージはどうかと思うが。

②proud of you feat. KRGS
の突き抜けるポップ感とは対照的に、こちらは陰りと浮遊感を感じさせるミステリアスな曲。派手じゃないものの、ところどころに“らしさ”を織り込んであり、さすがのソング・ライティングだなーと感じます。Keyによるメイン・リフは頭に残るしね。ライブだとサビのところで手拍子が入ることで熱量が上がる曲なんですけど、音源だと近未来感と冷たさが前面に出ており、決して攻めた曲調ではないのに、徐々にスリリングさが増してゆくアレンジが秀逸。J-POP/HR/アニソン調の歌を歌うことの多い、これまでのKRGSとはまた違った魅力を引き出しており、とても良いです。ライブでの幅も広がったし。
因みに、ほどではないものの、こちらもかなりの高音域を要求する曲だったりします。鬼畜。


2曲とも、従来の仮面ライダーのイメージとはちょっとベクトルの異なる、洗練された感じがあります。
つーか小室先生、V2のように自分で歌うことはしなかったんだな(笑)


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原尞『それまでの明日』

原尞_それまでの明日
原尞『それまでの明日』 (早川書房)

原尞、14年ぶりの新作『それまでの明日』を読みました。
もちろん、私立探偵・沢崎シリーズの最新刊。
そういや、御大の著作ってタイトルが全部7文字表記ですね。

11月初旬のある日、渡辺探偵事務所の沢崎のもとを望月皓一と名乗る紳士が訪れた。消費者金融で支店長を務める彼は、融資が内定している赤坂の料亭の女将の身辺調査を依頼し、内々のことなのでけっして会社や自宅へは連絡しないようにと言い残し去っていった。沢崎が調べると女将は六月に癌で亡くなっていた。顔立ちのよく似た妹が跡を継いでいるというが、調査の対象は女将なのか、それとも妹か? しかし、当の依頼人が忽然と姿を消し、いつしか沢崎は金融絡みの事件の渦中に。切れのいい文章と機知にとんだ会話。時代がどれだけ変わろうと、この男だけは変わらない。14年もの歳月を費やして遂に完成した、チャンドラーの『長いお別れ』に比肩する渾身の一作。

単行本ですよ、単行本。しかも発売前に予約して買った。
文庫本派、それも中古で買うことが多い管理人にとっては異例中の異例。別に筆者のサイン会に参加するためとかそういうのは関係なく、ただ単に最寄り駅の本屋さんで予約して購入しました。発売してからゆっくり買っても何の問題も無いんですけど、なんつーか、自分の中の意志確認とでもいいましょうか、それ(予約購入)をする価値のある作品になっているだろうと思ってましたし、それだけ心待ちにしていた作品でしたし。
もしかしたら出ないまま…、、、みたいなことも考えただけに、こうして刊行されたことが、ただただ、おめでたい。デビュー30周年記念作品としても、主人公・沢崎の30年にも、やっと出すことができた出版社にも、待ち続けた我々原ファンにも、おめでとう、と。


以下、人によっては「ネタバレ」と感じる部分があると思いますので、ご注意ください。
いや、マジでこのシリーズのファンなら、ウチの駄文に目を通す前に読んだ方が良いっすよホント。作品の出来とは関係ないところで。
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